研究課題/領域番号 |
17K10633
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
山本 将士 神戸大学, 医学部附属病院, 特命助教 (20645212)
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研究分担者 |
山下 公大 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (80535427)
鈴木 知志 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (30457080)
掛地 吉弘 神戸大学, 医学研究科, 教授 (80284488)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 制御性B細胞 / 大腸癌腹膜播種 / 抗CD20抗体 / 分子標的薬 / 化学療法 |
研究実績の概要 |
大腸癌根治術後の腹膜再発例は予後不良であり、腹膜再発に対する治療はいまだ有効なものは見いだされていない。最近、大腸癌の病態に抗腫瘍免疫応答が関与することが数多く報告され、免疫応答を標的とした治療介入が予後改善に貢献する可能性が示唆される。癌と免疫の関係は、cancer immunoeditingという概念で説明され、“免疫逃避”に陥り癌の進展が促進される。そのバランスの破綻は、免疫抑制機構の増強が関与しているとされ、その中心的働きを示すのが、骨随由来免疫抑制性細胞(myeloid derived suppressor cell; MDSC)や制御性T細胞(regulatory T cell; Treg) である。すでに申請者のグループは、抑制性細胞群である制御性T細胞(Treg)の調節が膵癌マウスモデルに有効であることを示し、MDSCを抗がん剤や外科切除により減少させ、肺転移を制御できる可能性を示した(Otsubo D, Yamashita K, et al. Anticancer Res. 2015)。その免疫抑制機構の一端を担う機能を持つB 細胞に存在することが示され、各癌腫に対する制御性B 細胞による抗腫瘍免疫応答の抑制とその抑制 機能の解除・遮断による腫瘍増殖抑制が報告されている。腹腔内にも局在するB細胞の動態や機能を解析し、腹水内細胞、リンパ節、末梢血、腫瘍浸潤リンパ球の解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在は腫瘍樹立マウスモデルの作成は完了し、C57BL/6マウスを宿主とし腫瘍細胞は、B16悪性黒色腫細胞株及びMC38大腸癌細胞株、また、BALB/cマウスを宿主として大腸癌細胞株CT26を用いて、皮下樹立モデルと腹膜播種モデルのモデル作成は完了した。現在、制御性B細胞を中心とした抑制性細胞の評価洗浄腹水、末梢血、所属リンパ節、腫瘍(皮下接種モデルのみ)において、リンパ球のサブセットの解析し、正常マウスの各サブセット解析を行なっている。granulocytic MDSC (G―MDSC)が経時的に上昇することが確認された。またB細胞のある分画が上昇することも確認できたた。現在、ヒトに関しては、研究の準備を進めている状況である。倫理的問題はクリアしており、各分画のヒトでの同定方法はほぼ完了しており、いよいよ研究開始の段階である。全体的に予定よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
マウスの問題は、腹膜播種モデルにおける血性腹水で末梢血の混入の可能性が否定できず、詳細の検討に至るに至っていない。しかし、細胞株の種類を増やすことにより、安定した結果を導き出す予定である。洗浄腹水、末梢血、所属リンパ節、腫瘍内(皮下接種モデルのみ)においてサブセット解析を行う。制御性B細胞、MDSC (M-MDSC; monocytic MDSC CD11b+Gr-1+Ly6C+Ly6Glo, PMN-MDSC; polymorphonuclear MDSC CD11b+Gr-1+Ly6CloLy6G+)の評価を確定に難渋している。制御性B 細胞に関しては、分画の評価およびサイトカイン分泌の機能解析を行い、より同定を早める。また、1群の個体数を増やして、より詳細な観察を加えて、結論を出す予定である。ヒトでは、準備段階は終了しているので、症例の集積が重要となる。当院の関連施設である、国際がん医療研究センターの開院に伴い、協力が得られれば、症例集積はよりハードルが下がるため、より早期に進められるものと考えられるが、他の関連施設にも協力を要請する予定である。
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