研究課題
本研究は、大腸癌の手術切除標本から門脈系（上腸間膜静脈、回結腸静脈）血液を採取し、その血液内のexosomeを抽出、解析することで、大腸癌肝転移ハイリスク群の新たな高感度バイオマーカーを明らかにすることを目的として開始された。exosomeは癌細胞を含むすべての細胞から分泌される小胞で、タンパク質、RNA、DNAなどが封入されており、血液中の分解から守られている。転移・浸潤をはじめ様々な働きをすると考えられているが詳細はまだ不明である。我々は、膵液から抽出したexosomeでも研究耐用可能であることを確認し、exosome中のmicroRNAレベルを測定して膵癌診断に有用なマーカーであることを明らかにしてきた。この方法を用い、昨年度までに大腸癌手術検体より得られた門脈系血液サンプルからexosomeの抽出を計画した。そこで血液中からのexosome抽出プロトコールを確立するために他癌腫の患者由来の血液を用いて検討した。しかし、各種条件を変更し抽出を繰り返し、ナノ粒子トラッキング解析、及び電子顕微鏡での小胞確認を行ったが、十分量のexosome抽出は困難であった。一方、microRNAの抽出も試みたが、血液由来では定量可能なレベルであったが、exosome由来のmiRNAは極めて低濃度で、バイオマーカーとしての定量的な検討は難しかった。一方、手術切除標本からの門脈系血液の採取に関して、術中に動脈や静脈を結紮切離してから、実際に組織を摘出して、その切除組織から血液を採取することを計画していたが、個々の症例において虚血時間が大きく異なっており、同じ条件での血液サンプルの取得が困難であると考えられたため、現在、切除前に切除予定の組織の門脈系血管からの血液サンプルを取得する方向で検討を進めている。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
International Journal of Cancer
巻: 146 ページ: 2498～2509
10.1002/ijc.32592
