研究課題/領域番号 |
17K10638
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
藤田 文彦 久留米大学, 医学部, 准教授 (40380943)
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研究分担者 |
江口 晋 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (80404218)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 肛門機能 / 肛門内圧 / 肛門括約筋 / 肛門機能再生 |
研究実績の概要 |
①ドナーラットより採取した脂肪幹細胞を肛門機能不全ラットの肛門周囲へ投与し、一定期間肛門内圧を測定する。最後に犠牲死させ、肛門周囲の組織からドナー由来の細胞を検証する。②肛門機能不全ラットの肛門周囲に脂肪幹細胞を直接注入し、さらには肛門周囲へ電気刺激を加えた肛門内圧の改善を観察する。③臨床にて肛門温存手術を受けた患者のうち、排便障害のある症例に対して十分なインフォームドコンセントを行った上で、肛門周囲組織へ自己脂肪由来幹細胞の移植を行う。腹部皮下あるいは大腿部の脂肪組織を吸引法にて採取し、閉鎖回路を用いて脂肪由来幹細胞のみを採取・濃縮させ、それを肛門周囲組織へ移植する。術後、創部の安定したころより電気刺激による肛門部リハビリを開始し、定期的に肛門機能の評価を行う。 平成29年度は上記①に取り組み、長期間にわたり安定した肛門機能不全ラットモデルを作成することができた。さらに脂肪幹細胞を注入したところ、肛門内圧が上昇し肛門機能の改善が認められた。しかし、HE染色やαSMA染色などにより再生した筋組織の解明には至らなかった。結局のところbulking効果を示すような組織が存在している可能性がある。 平成30年度は肛門機能改善を目指し、脂肪幹細胞をシート状にして塗布した試みを行った。この実験でも肛門内圧の上昇を示すことができたが、筋組織再生の証明には至っていない。注入した脂肪幹細胞から放出された物質の影響により、レシピエントに残存している筋組織が肥大していることが考えられた。 令和1年度では、脂肪幹細胞からの筋再生が証明できていないため、人への応用が難しいと判断し、筋を肥大させ肛門括約筋機能を上昇させる研究へ方向転換した。ラットモデルを用いて電気刺激による肛門内圧上昇を試みる動物実験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、脂肪幹細胞を用いて肛門括約筋を再生させ、肛門機能の改善を試みる研究を開始しており、動物による研究の後、ひとへの応用を目指す計画で研究を行っていた。肛門機能不全ラットを作成し、脂肪幹細胞による筋再生を試みたが、肛門機能の改善は確認できたものの、実際の組織を確認したところ組織の再生を証明するには至っていない。よって、この脂肪幹細胞によるヒトへの応用研究へ進んでいないのが研究が遅れている一番の原因である。肛門機能を再生させる目的のため、方針を転換して肛門の筋を肥大させることとした。同じ、肛門機能不全ラットを用いて、電気刺激による肛門括約筋肥大の研究を開始した。動物実験では肛門内圧の上昇を認め、電気刺激による機能改善が期待できるところまで来ている。
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今後の研究の推進方策 |
ラットを用いた動物実験にて電気刺激による肛門括約筋強化させることが証明できた。現時点ではその研究結果を論文発表する準備を行うとともに、ヒトへの応用へとすすめている。ヒトへ応用させるには効率的に肛門周囲の筋組織に刺激を加える新たな機器導入が必要であり、リハビリテーション部門と相談しながら機器の選定を行っている段階である。今後は、直腸癌手術後の患者を対象とした臨床応用を目指して研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の進行状況は、今後ヒトへ応用すべく電気刺激装置を選定しているところである。その機器を購入(借用)するための使用額が確定していないため、その予備費として使用額を残した状態となっている。今年度中に機器の選定をして購入し、研究を進める予定である。
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