研究課題
平成29年度は我々が開発した長期間の肛門不全を維持できるラットモデルを用いて、ドナーラットより採取した脂肪幹細胞をそのモデルラットの肛門周囲へ投与した。すると肛門内圧が上昇し肛門機能の改善が認められた。しかし、HE染色やαSMA染色などにより再生した筋組織の解明には至らなかった。結局のところbulking効果を示すような組織が存在したことが一因である可能性が挙げられた。平成30年度は肛門機能改善を目指し、ラットにおいて脂肪幹細胞をシート状にして貼付する試みを行った。この実験でも肛門内圧の上昇を示すことができたが、筋組織再生の証明には至っていない。前年の実験同様に投与した脂肪幹細胞から放出された物質の影響によりレシピエントに残存している筋組織が肥大していることが考えられた。すなわち、これもbullking効果と思われ、結局脂肪幹細胞より再生された組織(ドナー由来の組織)の存在を証明するには至らなかった。令和1年度からは、肛門機能改善方法の方針を再生医療から一転させた。これまでの実験にて脂肪幹細胞からの筋再生が証明できていなかったため、この方法ではヒトへの応用が難しいと判断した。肛門周囲の筋肉を刺激し、肛門括約筋機能を上昇させる方法である。まず、ラットモデルを用いて電気刺激による肛門内圧を上昇させる試みを行ったところ、肛門周囲の筋肉が肥大し肛門機能の改善を認めた。以上のように、当初再生医療による肛門機能の改善を試みたが、モデルを用いた研究では証明できなかったため、再生医療のヒトへの応用は難しいという結果となった。令和1年から行ってきた肛門周囲の筋肉を刺激する研究においては、臨床でのヒトへの応用が期待できた。よって、最終年度には直腸癌手術患者の術前、術後の肛門内圧を測定し、まずは通常の術後経過でどれくらい肛門機能が低下するのかのデータを集積することができた。
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