研究課題
2008年から2012年の大腸癌切除検体約133例の凍結標本を用いて、癌部、非癌部のreal-time PCRによるアクチビン発現解析を行った。その結果、癌部においてはアクチビンが高発現であり、大腸の正常組織ではほとんどみられないことがわかった(p<0.001)。また、大腸癌患者における骨格筋量を術前CTを用いて計測した。評価はL3領域の骨格筋面積(cm2)/身長2(m2)で行い、カットオフ値はサルコペニアに関する過去の報告(Montano-Loza, CGH 2012)より男性52.4、女性35.8とした。当科より以前報告したように(Miyamoto Y, Ann Surg Oncol 2015, Plos One 2015)、サルコペニアの状態にある患者では有意に予後不良である(p=0.014)。しかし、大腸癌組織で発現するアクチビンと骨格筋量の間に有意差はみられなかった。また、大腸癌切除標本を用いたアクチビンの免疫染色を行った。150例の免疫染色を行い、染色面積(0-3)、濃度(0-3)を用いてアクチビンの発現を評価している。これまではっきりとした予後の差はみられないが、症例を追加して検討を重ねる予定である。
3: やや遅れている
これまでアクチビン/ミオスタチン経路の阻害による腫瘍進展の抑制(Zhou X, Cell 2010)や、血中のアクチビン濃度と大腸癌患者の予後についての報告(Audrey L, J Cachexia Sarcopenia Muscle 2017)はあるが、大腸癌組織自体といった局所の発現と予後についての報告はない。本研究では、まず大腸癌組織のアクチビンの発現をreal time PCRや免疫染色を用いて評価し、臨床データや特に予後との関連を解析することを目標としている。現時点でin vitroの実験に繋がるデータが出ていないため、研究はやや遅れていると判断する。
1.アクチビンと大腸癌切除検体における発現解析を継続する。大腸癌凍結サンプルは約300症例存在するためRNA抽出→real time PCRによるアクチビンの発現を解析、臨床データとの比較を行う予定である。また、アクチビンの免疫染色も約300例を対象とし、染色・解析を行う。2.大腸癌術前症例における血清アクチビン発現を、ELISAを用いて測定する。血清アクチビン値と臨床病理学的所見、骨格筋量、予後との関連を解析する。3.アクチビンノックダウン細胞を樹立し、細胞増殖・浸潤能や細胞周期解析を行う。4.アクチビンと患者予後や癌の悪性度との関連が乏しい、またはアクチビン/ミオスタチン経路に関わる他の遺伝子が有意に影響を及ぼしていると判断すれば、他の遺伝子の発現解析を行う。
大腸癌組織のアクチビンの発現をreal time PCRや免疫染色を用いて評価し、臨床データや特に予後との関連を解析することを目標としているが、現時点でin vitroの実験に繋がるデータが出ていないため、多くの研究結果が必要となる。研究費はその際の試薬及び器機などの消耗品購入費に充てる他、研究成果発表、情報収集にかかる旅費に充てたいと考える。
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