研究課題/領域番号 |
17K10642
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
竹政 伊知朗 札幌医科大学, 医学部, 教授 (50379252)
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研究分担者 |
沖田 憲司 札幌医科大学, 医学部, 助教 (70517911)
西舘 敏彦 札幌医科大学, 医学部, 助教 (80404606)
植木 知身 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (00516627) [辞退]
秋月 恵美 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (20404626)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 大腸癌 / スクリーニング / 検診 / メタボロミクス / GTA-446 / 早期発見 |
研究実績の概要 |
大腸癌に対して、逐年内視鏡検査によってその死亡率を半減させることが米国の大規模試験で示されたが、一方でさらに早期の大腸癌診断、治療の重要性も同時に示唆された。大腸癌スクリーニングの一次検査である便潜血検査は、簡便で広く施行されているが、精度にバラツキがあり、新たな検診レベルでのスクリーニング法が探索されている。 われわれは、国際共同研究で血中メタボライト長鎖脂肪酸GTA-446 の低値が大腸癌患者に特有であることを報告した。GTA-446 測定により高危険度群を対象に効果的に内視鏡検査を実施するシステムが構築されれば、大腸癌の早期発見、早期治療につながることが期待される。本研究では、血液検体から測定可能なGTA-446を検診レベルで用いることで、日本人の新規大腸癌スクリーニングシステムを開発することを目的とした。 まず、assay systemとして血液中に存在するGTA-446 に対してFIA-MS/MSによるhigh throughput な測定系を利用したCologicの信頼性・再現性につき実サンプルを用いて検証する。続いて札幌医科大学およぶ関連施設で前向きに集積した大腸癌症例集積システムでの大腸癌におけるGTA-446 値の分布を連続的に測定し、日本人の男女別にGTA-446 値のスクローニング検査としての有用性を調べる。また、大規模な一定集団を対象として前向き研究を計画し、GTA-446 値に基づいて分類される大腸癌発症リスクと大腸内視鏡検査による腫瘍の存在診断との相同性について検証する。 最終的には、従来行われてきた一次スクリーニング検査である便潜血検査との比較検証を行い、健常人を対象として大腸癌罹患の危険性の高い群を抽出することで、効率的でintensiveな大腸内視鏡検査の実施体制の構築を図る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度研究計画として、1) 大腸癌症例および対照健常人の血液サンプルとその臨床情報の集積、2) GTA-446 の測定:FIA-MS/MS 法とLS-MS/MS 法の比較、3) GTA-446 の測定:LS-MS/MS 法による検討を予定した。1)については原則全症例に対して中央登録システムと標本(原発巣、生検サンプル、全血)の回収・保管システムを構築し、現在前向きに症例を集積している。血液サンプルについては、術前(入院時)と術後(退院時)の収集を行っており、手術による数値の推移を追跡することを可能としている。 2) でのGTA-446 の測定は、日本のビー・エム・エル社のCologicを用い、既に集積した大腸癌症例100 例と内視鏡検査により大腸腫瘍を認めなかった200 例の対照症例で従来法と、その精度、コスト、測定時間を比較検証する。 3)での GTA-446 の測定は、札幌医科大学の中央登録システムで集積した大腸癌患者400 サンプルと、年齢、性別背景を大腸癌症例背景とマッチングさせた対照健常人ボランティア1000 サンプルの合計1400 サンプルのLS-MS/MS 法での解析系を確立した。 以前の報告では国際共同研究という特性から、欧米人と日本人のサンプルをまとめて解析しているため、人種間および性差のGTA-446 値の分布に違いがある場合が考慮されていない。よって、日本人の男女別でのGTA-446 値と、これまでの国際研究の結果、および海外で前向き検証されている結果との乖離の有無についても検討する。 以上、本研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に引き続き、合計1400 サンプルのLS-MS/MS 解析を継続する。 また前向き試験に向けた基盤構築として、大腸癌の早期診断バイオマーカーとしてのGTA-446 の有用性を示すともに、大腸癌のみならず腺腫の発生とGTA-446 との関連性を明らかにし、さらに便潜血検査と有用性を比較するため、一般大腸内視鏡検査とGTA-446測定を組み合わせた前向き試験を計画する。具体的には、数千人程度の一定人口集団を設定し、血液検査、便潜血検査、大腸内視鏡検査を定期的に施行する。GTA-446 値から大腸腫瘍発生のリスク分類を行い、前向きに大腸内視鏡検査を進めることにより分類リスクによる発症率の差異を評価し、客観的指標として感度、特異度を算出する。同時に便潜血検査の感度、特異度を解析することで、診断マーカーとしての有用性をGTA-446 と比較する。以上についての研究プロトコールを確立し、研究プロトコールが導入可能な自治体を選定する。 研究プロトコールの実施にあたっては、実際に血液検査と便潜血検査、内視鏡検査を施行し、その結果について解析する。検査受診の啓発については、市民公開講座、自治体からのダイレクトメール、地域の情報誌などを活用して知名度を上げることに努める。得られた検査結果については、被験者へのフィードバックを漏れのないように徹底し、かつ解析段階においては個人が特定されないよう十分留意する。
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次年度使用額が生じた理由 |
Cologicによる検査委託先への費用精算が次年度以降となったため。
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