研究課題/領域番号 |
17K10644
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
高橋 広城 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (30381792)
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研究分担者 |
前田 祐三 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (10770258)
松尾 洋一 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (40381800)
原 賢康 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (80528860)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ポリフェノール / Bcl-xl / Mcl-1 / 消化器癌 |
研究実績の概要 |
私たちはこれまで、ポリフェノールによる抗腫瘍効果の作用機序を研究してきた。その結果、アポトーシス調整蛋白であるBcl-xLとMcl-1が共同してアポトーシスを抑制していることを発見した。この過程において、ポリフェノールは常にMcl-1を抑制するが、Bcl-xLは抑制される場合と逆に活性化される場合があるという興味深い現象を見いだした。本研究では、この研究を発展させ、ポリフェノールのBcl-xLに対する作用機序を分子レベルで解明し、消化器がんに対するポリフェノール療法による新たながん治療法を開発することを目的とする。 H29年度はポリフェノールがBcl-xLに及ぼす効果とアポトーシスの関係を検索し、Bcl-xLとMcl-1を同時に抑制することで非常に強いアポトーシスを誘導することを確認した。さらにそのシグナルの確認を行ったところSTAT3のリン酸化を抑制することでこれらの作用が発揮されることを突き止めた。 H30年度はさらにSTAT5の関与をwestern blotやcell death ELISA kitを用いて検索したが、ほとんど関与がないことが判明した。また、炎症性サイトカインであるIL-6を投与することでBcl-xLとMcl-1が活性化されることが新たに判明し、ポリフェノールはこの活性化されたBcl-xLとMcl-1を抑制することが判明した。 さらに大腸がんの臨床検体を用いて免疫染色を行い、Bcl-xLとMcl-1の発現と進行度についての検討を網羅的に行った。 これらの結果を踏まえ、今後遺伝子変異の有無・発現の程度とポリフェノールの効果についての検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画通り、western blotやcell death ELISAを用いてアポトーシスの検討は進んでいる。 これらをコントロールするシグナルやさらにその上流をコントロールする炎症性サイトカインの関与についても新たに発見することができた。 また臨床検体を用いた網羅的検討を行い、Bcl-xLとMcl-1と大腸がんの進行度に関係を検討することができた。 しかしポリフェノールの効果の強弱についてMutation analysis kitやTaqManアレイプレートで遺伝子変異の有無・発現の程度を検討する予定であったが、この点が進んでいないのが現状である。
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今後の研究の推進方策 |
ポリフェノールがBcl-xLに及ぼす効果とアポトーシスの関係をMutation analysis kit、TaqManアレイプレートで遺伝子変異の有無・発現の程度を検討する。 また、Bcl-xL特異的阻害剤であるABT737やA-1155463などの薬剤とポリフェノールの併用がもたらす効果を検証する。
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