研究課題/領域番号 |
17K10647
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研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
小川 仁 東北医科薬科大学, 医学部, 准教授 (00312570)
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研究分担者 |
柴田 近 東北医科薬科大学, 医学部, 教授 (30270804)
渡辺 和宏 東北大学, 大学病院, 助教 (30569588)
井ノ口 仁一 東北医科薬科大学, 薬学部, 教授 (70131810)
海野 倫明 東北大学, 医学系研究科, 教授 (70282043)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ガングリオシド / 潰瘍性大腸炎 / クローン病 |
研究実績の概要 |
・大腸癌患者から得られた正常大腸粘膜、炎症性腸疾患患者の肉眼的非炎症部、炎症部の粘膜を採取した。これまでにのべ80検体を採取し、これらを対象として粘膜中のガングリオシド分画をHPTLC法を用いて検討した。 現時点までに判明したことは、①SM3,4は健常粘膜に比べて潰瘍性大腸炎粘膜では炎症部、非炎症部炎症部とも低下している。②GM3は潰瘍性大腸炎粘膜の非炎症部では健常粘膜と同様だが、炎症部では増加している。③SM4は大腸の部位によって発現量が異なる可能性がある。これまで炎症性腸疾患の病態とこれらのガングリオシドの関係については不明であった。現時点での研究結果は、ガングリオシドが炎症性腸疾患の病態形成に関わっている可能性が高いこと、しかも非炎症部でも健常粘膜との相違がみられることから病態形成のかなり早い段階に関わっている可能性があることを示唆している。 またこれまで、なぜ潰瘍性大腸炎は「直腸から口側に向かって連続的な炎症を認める」疾患であるかを説明可能な理論は存在しない。正常粘膜においてSM3、4の発現が大腸の部位ごとに異なることが事実であれば、この謎を解明する手がかりが得られる可能性がある。 以上、ガングリオシドは炎症性腸疾患の病態形成に関与する新しいキープレイヤーであることがこれまでの研究で示唆されている。 ・炎症性腸疾患患者の末梢血血漿を継時的に採取し、凍結保存している。今後さらに検体を蓄積し、末梢血中のガングリオシド分画をHPTLC、質量分析法によって検討し臨床像との比較に用いる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、200例の粘膜検体を採取する予定であった。2017年度の1年間で80検体を集積しており、今後も同様のペースで粘膜が得られることが見込まれる。これらの検体を用いて、今後さらに詳細な検討を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
・正常大腸粘膜、炎症性腸疾患患者の肉眼的非炎症部、炎症部の粘膜採取を継続する。これらを用いて、炎症性腸疾患とガングリオシド発現の関連をさらに詳細に検討する。 ・同時に、これらの粘膜のRNAを保存中である。他の炎症性サイトカイン(IL-12, IL-23, TNFa等)の発現とガングリオシドの変化を比較することで、病態形成のどの部分に関わるかを検討する。 ・現在、炎症性腸疾患患者の末梢血血漿を採取、保存している。これらを用いて末梢血中のガングリオシド量を測定し、臨床像との関連を検討する。 ・GM3ノックアウトマウスにおけるDSS腸炎の発症形態について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年度は本研究計画の1年目である。最初は倫理委員会審査および粘膜検体採取を中心に研究を行っていたため、試薬類の購入が当初の計画よりも少額であった。2年目以降は試薬を用いた実験が進多くなるため、2017年度よりも多くの研究資金を必要とする予定である。
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