研究実績の概要 |
ヒト手術検体から得られた消化管粘膜を用いて、ガングリオシドの発現に関する検討を行っている。これまでに大腸癌症例の正常粘膜、潰瘍性大腸炎、クローン病の小腸大腸からそれぞれ炎症のある部位、炎症を認めない部位を、合計207検体を採取保存した。 これまでのHPTLCによる解析では、正常粘膜でのGM3, GD3, GD1a, LacCer, Gb3, GB4のガングリオシド発現は回腸、右側結腸、左側結腸、直腸においてほぼ同様であり、部位による発現に大きな違いはないことが確認された。また正常粘膜に比べて潰瘍性大腸炎粘膜ではHexCer,SM3, SM4の発現が炎症の有無に関わらず低下し、炎症のある部位ではない部位と比べてGM3, LacCer, GB3, GB4の発現が増加していることが確認された。これらの結果は、ガングリオシド分子種が潰瘍性大腸炎の病態形成に関与していることを示唆する所見である。 また免疫染色法により、大腸粘膜でGM3を発現している細胞の検討を行った。これまでのところ血管内皮細胞での発現を確認したが、従来の知見からはマクロファージをはじめとした炎症細胞での発現が予測されるため、今後染色条件等の検討を進める予定である。 これらのガングリオシド分子種の発現変化のメカニズムを探るため、正常粘膜、潰瘍性大腸炎の炎症のある部位、ない部位の粘膜からRNAを抽出し、TNFαをはじめとした炎症性サイトカインの発言をreal-time PCRで行うこととした。本実験は現在進行中である。
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