研究課題/領域番号 |
17K10651
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
岡林 剛史 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 専任講師 (00338063)
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研究分担者 |
長谷川 博俊 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (00218455)
鶴田 雅士 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (00348666)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 大腸癌 / 肥満 / 発がん / ADAM17 / TNF-α |
研究実績の概要 |
本研究では、ADAM17を介したシグナル伝達経路が肥満関連大腸癌の発癌過程にどのような役割を果たすのかについて解明を進める。肥満関連大腸癌の発癌、進展にはleptinやTNF-αといった肥満関連cytokinesが重要な役割を果たしていると報告されている。ADAM17 はTNF-αの膜型前駆体を切断・可溶化する酵素として同定された分子であるが、肥満関連大腸癌の発癌過程にどのような役割を果たしているかについては明らかでない。 われわれは肥満マウスを用いて大腸腫瘍の発生に関する研究を行っており、アゾキシメタン(AOM)を用いた肥満関連大腸癌発癌マウスモデルを樹立し、肥満マウスで大腸腫瘍数が有意に増加することを示した。その大腸粘膜には高度のF4/80陽性単球の浸潤を認め、肥満による慢性持続炎症によるcytokinesの強い影響が示唆された。われわれは、multiplexを用いてcytokines濃度を網羅的に測定した。特にTNF-αの濃度は体重依存性に増加しており、TNF-αが肥満関連大腸癌の発生機序に大きな役割を果たす可能性を示した。TNF-α変換酵素であるADAM17による切断で速やかにsheddingされて遊離型TNF-αとなり、オートクライン・パラクライン機序により各種の細胞を活性化させ、本遺伝子の抑制により肥満関連大腸癌が減少すると予想された。そこでわれわれは、肥満関連大腸癌の新たな制御遺伝子としてADAM17に着目し、以下の手順で研究を遂行する予定である。1.ADAM17コンディショナルKOマウスを用いた肥満関連大腸癌のメカニズムの解明、2.オルガノイドおよび大腸癌細胞株によるADAM17発現抑制の意義の評価、3.臨床検体を用いたADAM17発現と肥満関連因子の比較検討。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の根幹をなすのは、ADAM17flox/flox マウスと腸管上皮細胞で Cre を発現する Villin-Creマウスを交配し、腸管上皮細胞特異的なADAM17コンディショナルKOマウスを作成することであるが、飼育区域に発生した感染症によりそれぞれのマウスが殺処分となってしまいマウスの作成が遅れてしまっている。現在、腸管上皮細胞特異的なADAM17コンディショナルKOマウスを得るための最終的な交配を行っており、ジェノタイピングが済み次第肥満関連大腸癌を作成するする予定である。 一方で、研究の最終段階で行う予定であった臨床検体の検討についてはすでに開始しており、免疫染色の結果を蓄積中である。
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今後の研究の推進方策 |
腸管上皮細胞特異的なADAM17コンディショナルKOマウスを得るための最終的な交配を行っており、ジェノタイピングが済み次第肥満関連大腸癌を作成する。これには約8か月ほどの時間を要する見込みであるが、その後、microarray解析へ速やかに移行する予定である。 また、免疫染色の研究についてはマウスの検体を待つ必要はないので、ヒト検体を用いた研究を進め、臨床的観点から仮説の裏付けを進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であったマウスの飼料代がマウスの殺処分のため、翌年度の購入することになったため。
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