研究課題
本研究では、次世代シークエンサー(NGS)を用いて大腸癌リンパ節転移、肝転移に関与する遺伝子を突き止め、既存の診断法、治療法よりも精度の高い医療、臨床応用を確立することを目的とする。近年、遺伝子の転写開始点を網羅的に解析するCAGE法(capanalysis of gene expression法)が開発された。そしてこのCAGE法により、ヒトの18万を超える転写開始点とそれに由来する転写産物の発現量の網羅的解析が行われた。我々はこのCAGE法などを用い、肝転移を伴う症例も含め、大腸がん症例を対象にてがん組織発現の網羅的解析に取り組んできた。さらに症例の追跡調査を行い、予後、再発などの新たな臨床データを取得し、候補遺伝子群から絞り込む解析を行っている。この再解析によって得られた新たな遺伝子群に関して文献調査を含めた検討を行っている。今後新規マーカー取得を目指し、MA-plotによる候補遺伝子の同定だけでなく、GO解析、パスウェイ解析など、大腸がんの転移に関与するシグナルカスケードの評価を多角的に取り組む。検証の過程において必要であれば、追加の解析から検証データを取得し、肝転移マーカのさらなる絞り込みをさらに行う。本研究の結果、大腸癌患者の術前内視鏡検査において、早期に肝転移を検出するシステムを確立することが可能になれば、これまでにない治療効果が期待できる。また、術前化学療法の適応にも影響を及ぼすことが期待され、現在の臨床医療に対して貢献できると考える。
3: やや遅れている
本研究は、大腸癌肝転移に関与する遺伝子を特定することにより、既存の診断法、治療法よりも精度の高い診断マーカーを創出し、臨床応用につなげる事を目指してきた。これまでの研究により、我々はすでに大腸癌において特異的発現を示す遺伝子群を特定し、さらに肝転移特異的なマーカー候補遺伝子などを選抜した。この点では当初目的とした成果を得つつあるといえる。しかし研究の進展により、我々が既に行っていた遺伝子の群分けの変更が有用である可能性が浮上した。このため肝転移症例の再発の有無なども含めた臨床情報を更新し、CAGE解析の群分けを再度行った。さらに新たな手法も用いて解析をすすめている。以上から当初計画より研究工程が増え、予定より時間を要することとなった。
肝転移症例の再発の有無なども含めた臨床情報を更新し、CAGE解析による遺伝子の群分けを再度行った。この新規な群分けによって肝転移マーカーとして有効な新規遺伝子の絞り込みを行っている。次年度は候補遺伝子群から、とくに選びだした遺伝子の肝転移マーカーとしての有用性を評価を行う。取得データと、各種データーベースの対照などによるドライな解析の他、新規検体を用いたNGS解析、デジタルPCR解析などを追加し、候補マーカーの有用性検証も順次行っていく。
大腸癌肝転移に関与する遺伝子の特定、高精度の診断法確立を目標とし研究を行ってきた。CAGE解析結果の再度の群分けの後、遺伝子データーの解析を進めてきたが、この新たな群分けにより研究工程が増えたこと、症例の予後を含めた臨床情報の取得に時間が掛かっていること、さらに研究棟の移転の影響もあって作業の停滞を生じた。またこの移転作業・場所の確保が長引いたことから、予定していたフリーザーの購入を延期した。2020年度にはNGSなどによる遺伝子・遺伝子発現解析のため、この資金を使用する。また解析に供する検体の一次保管のために小型フリーザーの購入も必要である。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
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