研究課題/領域番号 |
17K10652
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
小見山 博光 順天堂大学, 医学部, 非常勤講師 (30348982)
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研究分担者 |
加藤 俊介 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40312657)
茂櫛 薫 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (60569292)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 大腸癌 / CAGE法 / マイクロダイセクション / 癌遺伝子 / バイオマーカー / 肝転移 / 転移予測マーカー |
研究実績の概要 |
本研究では、次世代シークエンサー(NGS)を用いて大腸癌リンパ節転移、肝転移に関与する遺伝子を突き止め、既存の診断法、治療法よりも精度の高い医療、臨床応用を確立することを目的とする。近年、遺伝子の転写開始点を網羅的に解析するCAGE法(cap analysis of gene expression法)が開発された。そしてこの定量性の高いCAGE法により、ヒトの18万を超える転写開始点とそれに由来する転写産物の発現量の網羅的解析が行われた。我々はこのCAGE法などを用い、肝転移を伴う症例も含め、大腸がん症例を対象にてがん組織発現の網羅的解析に取り組んできた。さらに症例の追跡調査を行い、予後、再発などを含めた新たな臨床データを取得し、肝転移群特異的マーカー候補遺伝子群から絞り込む解析を行っている。 再解析によって抽出された、病態特異的な動向を示すマーカー遺伝子候補群に対し、さらに様々な手法で多角的な解析を行い、新たな候補遺伝子群を得た。特に、患者毎に個別の遺伝変異を詳細に解析・比較を進めているが、その結果から血中マーカー候補となる配列変異を複数抽出しているが、目下、それらの候補変異について、様々な観点から有望性・有効性の検討を進めているところである。 本研究の結果、大腸癌患者の術前内視鏡検査において、早期に肝転移を検出するシステムを確立することが可能になれば、これまでにない治療効果が期待できる。また、術前化学療法の適応にも影響を及ぼすことが期待され、現在の臨床医療に対して貢献できると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、大腸癌肝転移に関与する遺伝子を特定することにより、既存の診断法、治療法よりも精度の高い診断マーカーを創出し、臨床応用につなげる事を目指してきた。これまでの研究により、我々はすでに大腸癌において特異的発現を示す遺伝子群を特定し、さらに肝転移特異的なマーカー候補遺伝子などを選抜した。この点では当初目的とした成果を得つつあるといえる。また新たな手法も用いて解析をすすめてきた。以上から当初計画より研究工程が増え、予定より時間を要していたところ、 2020年度は新型コロナウイルス感染拡大により、代表者らの業務が多忙となり、協力者との連携にも支障が生じたことから研究の進行に遅れが発生した。
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今後の研究の推進方策 |
肝転移症例の再発の有無なども含めた臨床情報を更新し、CAGE解析による遺伝子の群分けを再度行った。この新規な群分けによって肝転移マーカーとして有効な新規遺伝子の絞り込みを行っている。次年度は候補遺伝子群から、特別に選抜した遺伝子の肝転移マーカーとしての有用性を評価を行う。取得データと、各種データーベースの対照などによるドライな解析の他、新規検体を用いたNGS解析、デジタルPCR解析などを追加し、候補マーカーの有用性検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
大腸癌肝転移に関与する遺伝子の特定、高精度の診断法確立を目標とし研究を行ってきた。CAGE解析結果の再度の群分けの後、遺伝子データーの解析を進めてきたが、この新たな群分けにより研究工程が増えたこと、症例の予後を含めた臨床情報の取得に時間が掛かった。 研究棟内での部署の移転作業も作業進行に影響した。さらに新型コロナウイルス感染拡大により、代表者・分担者らの業務は繁多となり、協力者との連携作業も遅れたことから、一部計画は次年度に行うこととした。
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