研究実績の概要 |
がん治療における課題は、転移・再発への対応であり、がん患者における転移の有無やその性状の把握は予後評価や治療方法を検討する上で重要な情報となっている.そのためには 大腸癌の検出感度の向上に取り組むことが重要である. がん細胞は血液の流れに乗って肝臓などの臓器に生着して転移を起こす.この血中に浮遊する細胞を血中循環癌細胞(Circulating Tumor Cell; CTC)と呼び,これを捕捉するシステムが開発された. CTCは米国(FDA)で臨床試験が行われているが,先行開発された既存のシステムでは、抗体の設定を自由にできず,捕捉率も悪く,大腸がんの臨床応用に不向きである.これは,細胞表面抗原を認識する抗体を用いたCTC検出法に効率面での問題があるためである. 他にもCTCの捕捉には,さまざまな手法の開発が行われているが,いずれも検出感度が低いことが課題である.一方,本邦で開発されたテロメスキャンは,癌で高発現しているテロメラーゼを指標とし て癌を捕捉する手法である. 我々は、このテロメスキャン法に着目,さらに改良を加えた改良型テロメスキャン法により,精度の高いCTC測定法の構築を進めてきた.大腸がん患者より採取し た血液を用いた解析を進める.大腸癌患者採血検体のCTCを解析し,従来法によるCTCの検出と比較したところ,改良型テロメスキャン法を用いた場合には,従来 法よりもCTC検出量が高いことが明らかになった.テロメスキャン法によって精度の高い大腸癌CTC測定が可能になることになれば,採血検体からのCTC検出により大 腸癌早期検出,さらに手術や化学療法の効果も評価可能となり.治療法選択の上でも有用である
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