研究実績の概要 |
5指多関節型のロボットハンドを12mm臍部用ポートから挿入, かつ触覚を術者左手にフィードバックするシステム, それらHALSの長所を最大限に活かした次世代型の完全腹腔鏡下のロボット手術を目指し, 研究を開始した. まず解決すべき課題は5指多関節型ロボットハンドの開発であった. これまで開発してきた義手用ロボットハンドを12mmポートから腹腔内に挿入するため, ハンド部分を折り畳む方法や, 腹腔外で分解し腹腔内で自動組立を行う方法など小型化を目指し開発・改良を行ってきた. 現在ロボットハンドの手関節は最大直径30mmまで最小化が進み,不正確であった第1指・2指の嵌合操作(OKサインのように円を描く)は, 3Dプリンタで作成した外骨格型システムに変更することにより,かなり改善している。また従来からの手術同様に愛護的に臓器を圧排, 把持拳上および牽引操作, 5本指による鈍的剥離機能(finger fracture)等の動作精度を上げるために,第4指・5指の第1関節の動きを省略することで,HALS動作に最低限必要不可欠な指関節の機能を有することも判明した. 臨床応用に向けては, 鶏胸肉を擬似臓器と見立て, HALS手技に必要なロボットハンド仕様(運動自由度・力・量など)や制御手法(必要可動域・倍力制御)等を調査している. またこれまでにドライボックスを使用して,鶏胸肉の皮を第1指・2指で摘まむ(pinch), 肉を全5指で掴んで(grasp), 5cm以上持ち上げ90度以上回転運動を加える等の仮想手術トレーニングを数十回行った. さらに学内動物実験倫理委員会の承認を得た後,臓器摘出手術を目的とした動物実験(豚)も行った. 2019年度はロボットハンドの改良・開発と仮想手術トレーニングを繰り返し行っており,2020年度には動物実験にて脾摘・胆摘・直腸切除等を行う予定である.
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