研究実績の概要 |
ヒト大腸癌細胞株のマウス同所性移植モデルの研究 (Sasaki H, et al. Cancer Sci. 2008 Apr;99(4):7 11-9.)、さらにそのin vivoモデルにもとづく上皮間葉転換(epithelial-to-mesenchymal transition: EMT)の解析とcDNA マイクロアレイの発現プロファイルとの相関解析から、EMT関連候補遺伝子 (Serpini1, CHST11, そのほか)を絞り込んできた(Matsuda Y, et al. Cancer Sci. 2016 May;107(5):619-28.)。本研究の目的は、これら2研究をさらに発展させて、EMTを制御する候補遺伝子の機能解析を進めてその機序を明らかにし、EMTを制御する新規化合物と天然物を同定、さらに最適化して、大腸癌の新規治療法と集学的治療を開発することである。 わたしたちは外科臨床をとおして、切除凍結標本をティッシュバンクに保存し、対応するホルマリン固定標本の蓄積につとめ、大腸癌、胃癌、そのほかの組織を約100検体保存し今後の研究の基盤としてきた。 Western blottingにて、EMT形質をもつ大腸癌細胞株SW620の培養上清中のSERPINI1分泌蛋白がE-cadherinの発現を抑制することを明らかにし、同様にEMT形質をもつ大腸癌細胞株COLO320でも同じ傾向が得られた。このことはEMT形質をもたないと分類された大腸癌細胞株(HT-29, SW948, T84, LoVo, HCT8, HCT15, DLD-1など)では確認されなかった。CHST11のEMTにもたらす効果についても検討中である。 またマウス同所性移植腫瘍も解析対象として、Serpini1, CHST11遺伝子産物の免疫組織化学染色を行い、肝、肺、リンパ節、ほかの浸潤と転移における意義についても検討を進めてきた。
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