研究課題/領域番号 |
17K10661
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
久保木 知 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (50571410)
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研究分担者 |
野島 広之 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (10507320)
酒井 望 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (70436385)
大塚 将之 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (90334185)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 高齢肝 / 肝切除 / 肝再生 / NF-kappaB / Pin1 |
研究実績の概要 |
肝外胆管切除を伴う拡大肝切除を施行した患者を対象とした臨床データでは高齢群では術後早期から6ヶ月の長期にわたり残肝の肝再生は抑制され、術後重症合併症が有意に増加した。よって、加齢に伴う肝再生抑制機序の詳細を解明するためにマウスモデルを用いた基礎的研究を施行した。過去の文献では人間の50歳程度に相当する月齢12ヶ月前後のマウスを用いた高齢肝における肝障害増強や肝再生抑制に関する報告は散見されるが、更に高齢マウスでの研究は存在しない。現在の臨床では70-80代の高齢者に対する手術リスクが問題となるため、今回は人間の80歳程度に相当する月齢18-24ヶ月のマウスを用いて70%肝切除モデルを作成し、週齢10週程度の若年マウスと肝再生シグナルおよび残肝重量を評価した。高齢マウスでは若年マウスと比較して有意に術後4日までの残肝重量が低値であり、加齢による肝再生抑制が確認された。肝切除術後の肝再生促進シグナルの重要な因子のひとつにNF-kappaB活性亢進が挙げられる。若年残肝では術後4時間よりNF-kappaB活性亢進が生じ、術後48時間をピークとして術後96時間までNF-kappaB活性亢進は継続したが、高齢残肝では術後を通じてNF-kappaB活性の亢進はごく軽度にとどまり、その活性は有意に抑制されていた。よって、肝切除後のNF-kappaB活性不全が高齢肝の肝再生遅延の主要な一因と考えられた。我々は以前より肝切除後のNF-kappaB活性亢進を誘導する主要な因子としてPin1に着目している。若年残肝および高齢残肝それぞれにおけるPin1発現を評価したところ、若年残肝では肝切除後早期に急激な発現増強をみとめたが高齢残肝では肝切除後のPin1発現増強が認められなかった。よって、高齢残肝におけるPin1不足が高齢マウスにおける肝切除後のNF-kappaB活性不全の原因と推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床データをもとにして、高齢肝における拡大肝切除術後の肝再生機序の詳細を検討することを目的として本研究を進めている。臨床データとして高齢患者では術後合併症が増加することを証明できたので、それをもとに動物実験に進むことが出来た。また、動物実験の結果は臨床データとおおむね一致し、我々の過去の基礎研究よりターゲットとしたPin1によるNF-kappaB活性亢進を軸として更なる基礎研究を進めることが出来ており、概ね順調に経過していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、高齢マウス肝におけるPin1によるNF-kappaB活性の原因として、サイトカインに対する反応低下機序を評価していくとともに、NF-kappaB活性抑制の結果として生じる肝再生促進因子発現の低下も検討していく。さらには、細胞実験にてマウスでの結果をconfirmしたい。
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