当該年度においては、研究項目(2)HCC細胞における各種長鎖ノンコーディングRNAの発現上昇の効果の解明(in vivo解析)、及び研究項目(3)HCC症例由来の組織を用いた長鎖ノンコーディングRNAの臨床病理学的検討を中心に研究を遂行した。前年度までの研究において、長鎖ノンコーディングRNAであるPRC1-AS1及びLINC00665の発現変動が肝細胞癌(HCC)細胞の浸潤に影響を及ぼすことを明らかにした。当該年度においては、その生理学的効果が生体内においても誘導されるか否かを検討する目的で、PRC1-AS1及びLINC00665の発現低下を恒常的に誘導させた細胞株の樹立を試みた。その結果、PRC1-AS1及びLINC00665の双方において、作製した発現低下を誘導するベクターを導入すると多くの細胞で毒性が発揮され、恒常的な発現低下細胞の樹立には至っていない。In vitroにおけるsiRNAを用いた発現低下の誘導では顕著な細胞死は見られなかったことから、PRC1-AS1及びLINC00665の長期的な発現低下が細胞死を誘導する、あるいは作製したベクターの導入による副反応が生じているものと考えられる。一方、HCC症例におけるPRC1-AS1及びLINC00665の発現性を解析する目的で、切除されたHCC組織におけるPRC1-AS1及びLINC00665の発現を非癌部組織と比較した。その結果、PRC1-AS1及びLINC00665双方においてHCC組織における発現上昇がみとめられた。当該解析は少数症例で実施したものであり、今後の解析において大規模症例数のHCC組織におけるPRC1-AS1及びLINC00665の発現性を検討する必要がある。
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