研究課題
本研究は、「抗酸化ストレス蛋白質であるNQO1発現が大腸癌肝転移に対する術前補助化学療法の効果予測マーカーとなり得るか否かを明らかにすること」を目的としていた。大腸癌肝転移でのNQO1発現パターンを解明するために、当院で大腸癌肝転移に対して肝切除を行った88例にモノクロナール抗体を用いた免疫組織化学を行った。88例のうち術前化学療法を施行されたのは30例であった。腫瘍細胞におけるNQO1発現からNQO1陽性群とNQO1陰性群に分けられた。また、NQO1発現には遺伝子多型が存在し、生来NQO1を発現することができない症例が存在することから、通常NQO1発現陽性を示す肝内胆管の非腫瘍性上皮細胞において、NQO1発現有するNQO1非多型群とNQO1多型群に分けられた。結果は、NQO1陽性群が61例(69.3 %)、NQO1陰性群が27例(30.7 %)であった。また、NQO1非多型群が69例(78.4 %)、NQO1多型群が19例(21.6 %)であった。NQO1陽性群はNQO1陰性群よりも全生存期間が有意に悪かった(累積5年OS率:90.9%対66.5%、P=0.026)、またNQO1陽性は多変量解析における独立した予後不良因子であった(ハザード比5.296, P=0.007)。大腸癌肝転移の術前化学療法に対する効果については、NQO1多型群がNQO1非多型群よりも有意に奏功していた(P=0.004)。NQO1発現があることは、大腸癌肝転移の肝切除後の予後不良因子である可能性がある。NQO1多型の存在は、大腸癌肝転移の術前化学療法の効果予測マーカーとなり得る可能性がある。