研究課題/領域番号 |
17K10664
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
清水 明 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 講師 (00447773)
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研究分担者 |
本山 博章 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 助教 (20569587)
宮川 眞一 信州大学, 医学部, 特任教授 (80229806)
小林 聡 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (90334903)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ALPPS / NOS / NO誘導 / 肝再生 |
研究実績の概要 |
Associating Liver Partition and Portal vein ligation for Staged hepatectomy(ALPPS)手術における,門脈塞栓術を凌駕する迅速な肝再生現象の原因は明らかでない.我々は,両手術の動門脈血流動態の差とNOSの関連に着目し,ALPPSの肝再生促進は,「動門脈血流動態変化に基づくshear stressの差が原因」であり,それには「NOS活性化とNO誘導が関与している」という作業仮説をたて,平成29年度の実験1から実験3に引き続き,平成30年度において以下の研究成果を得た. 実験4:NOS阻害剤によるNOS活性化抑制の検証:L-NAME投与ALPPSモデルにおける術後1時間後,4時間後,6時間後,24時間後の予定残肝組織内でのeNOSタンパク量,リン酸化eNOSタンパク量の評価をWestern blottingで行い,eNOSタンパク量は変わらないもののリン酸化eNOS(Ser1177)タンパク量は低下していることを確認した. 実験5:NO誘導剤による肝再生現象促進の検証:NO誘導剤であるMolsidomineをPVL手術24時間前および手術直前に100mg/体重Kgの用量で腹腔内投与するMolsidomine投与PVLモデルの作成し,Molsidomine投与/非投与PVLモデル間で,予定残肝重量増大率ならびにKi67 標識率を比較した.その結果,術後48時間後の予定残肝重量はMolsidomine投与モデルで有意に重く,Ki67標識率も有意に高率であり,NO誘導剤による肝再生促進現象が確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度〜平成30年度の研究実績内容は,研究計画調書における当初の研究計画内容と若干の相違がある.すなわち,平成29年度に行う予定であった術後肝機能推移の評価を平成31年度に行うこととし,平成30〜31年度に行う予定であったNOS阻害剤投与による肝再生促進現象抑制の検討ならびにNO誘導剤投与による肝再生現象促進の検討を平成29〜30年度中に繰り上げて行った.これは,作製モデルの有効活用ならびにデータ収集の効率性などを考慮した結果,本研究の実験仮設であるALPPS術後早期肝再生促進現象にNOSが関与していることをまず検証することで,仮に否定的な結果が確認された場合に,その後の実験内容の修正ならびに追加が容易であり,次年度以降の研究推進に重要と判断したためである.NOS阻害剤投与による肝再生促進現象抑制ならびにNO誘導剤による肝再生現象促進の実験結果は,本実験仮説を支持するものであり,当初の実験計画の方向性に沿った研究推進が可能と考えられる. 従って,総合的に本研究の進捗状況は概ね予定通り進行していると判断される.
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今後の研究の推進方策 |
NO誘導剤であるMolsidomine投与による肝再生促進の検証として,MolsidomineをPVL手術24時間前および手術直前に100mg/体重Kgの用量で腹腔内投与するMolsidomine投与PVLモデルにおける術後1時間後,4時間後,6時間後,24時間後の予定残肝組織内でのeNOSタンパク量,リン酸化eNOSタンパク量の評価(Western blotting)を行う. さらに,肝血流動態の変化に伴うeNOS活性化の原因としてeNOSの上流にあるAkt活性化に着目し,Aktタンパク量,リン酸化Akt(Ser473)タンパク量の評価(Western blotting)をPVLモデル,ALPPSモデル,ならびにHx群で行う. また,術後肝機能評価の検証として,PVL モデル,ALPPS モデルにおける,術後2 日目,3 日目,7 日目における予定残肝の胆汁産生量および予定残肝組織内ATP 含有量定量を行い,両群で比較検討する.
以上の実験系で,ALPPS術後の迅速な肝再生促進現象に,NOSならびにNO産生が関与していることを直接的に証明する.
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次年度使用額が生じた理由 |
作製モデルならびに購入物品・試薬の有効活用ならびにデータ収集の効率性などを考慮した結果,平成29年度に行う予定であった術後肝機能推移の評価を平成31年度に行うこととし,平成30-31年度に行う予定であったNOS阻害剤投与による肝再生促進現象抑制の検討ならびにNO誘導剤による肝再生促進の検討を平成29-30年度中に繰り上げて行ったため,平成29年度に購入した物品・試薬等を使用することにより当初予定していた必要額を下回る金額となった. しかし,平成31年度においては,平成29-30年度より繰り越された実験系を行う必要があり,次年度使用額が研究の完遂には必要であるため上記のごとく計上した.
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