研究実績の概要 |
我々は当初,我々が独自に樹立した肝組織内在性幹細胞であるportal branch ligation-stimulated hepatic cells (PBLHCs) を用いて,signal sequence trap (SST) 法によりadult liver-derived progenitor cellsに特異的な細胞表面マーカーを同定し,これを用いて効率的な肝組織からのcell sortingを行うことを企図していたが,残念ながら特異的細胞表面マーカーの同定を行い得なかった.このため当初研究計画に盛り込んでいた,adult liver-derived progenitor cellsの膵内分泌細胞への可塑性検討を進めることとした. この検討では,膵臓特異的転写因子を異所性発現させcellular transdiferentiationが惹起された細胞に対し,特定の液性因子(N2サプリメント,glucagon-like peptide-1 receptor agonist, notch阻害剤, TGF-β阻害剤)を付与することにより,①C-ペプチド陽性細胞発現率はおよそ1.2倍に亢進し,②C-ペプチド産生性は12倍に増強された.また③これらの細胞は細胞外グルコース濃度に応じたインスリン分泌能を獲得し,④糖尿病マウスに移植することによりその血糖値を改善せしめた.これらの知見は分化転換細胞の機能的成熟を促進する特定の物質が存在することを示唆する知見であり,糖尿病治療のおける新たなアプローチを提示するものであると考えられた.
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