研究課題
本研究では、①NASHにおける肝臓線維化が病態悪化の主因であるか随伴病態であるかを高脂血症マウスと線溶関連因子のノックアウトマウスを用いて、四塩化炭素によるNASH誘導モデルを用いて組織線維化の程度を調節することで解析する、②NASHにおいてはメタボリック症候群などで潜在的に活性化している肝内マクロファージが腸内細菌などによる暴露でさらに活性化してしまうことが原因とされてきているが、線溶因子が影響するかを①で使用したマウスの肝内マクロファージや骨髄細胞由来マクロファージを用いて解析する、③線溶因子がNASHに関連している場合、線溶因子の薬剤投与による調節でNASHの治療や予防の可能性を①で使用するマウスで探索する、ことを目的としている。本年度は、Wtマウス、L-/-/A-/-マウスを24週齢で安楽死させ、肝臓と血液を採取し各種マーカーや組織学的形態変化を検討した。Wtマウスと同様、高脂血症モデルであるL-/-/A-/-マウスにおいて、肝臓における組織学的変化は全く認めず、血清中の肝臓障害マーカーにおける変化も認めなかった。NASHを誘発するために四塩化炭素を用いることが一般的に行われているが、効果発現には時間がかかるため様々な誘導を行っているので、本年度は肝内マクロファージをBCGにより賦活化し、その後四塩化炭素を投与することで効果的に肝内病変を誘導することが出来るか試みた。BCG非投与群におけるWtマウスとL-/-/A-/-マウスを比較した場合、L-/-/A-/-マウスにおいてやや症状発現が促進されていることが判明し、この発現時期と発現状態はBCG投与によって大幅に促進されることが判明した。今後はこのモデルをベースとして各遺伝子の機能を解析していく予定である。
2: おおむね順調に進展している
昨年度に続き、四塩化炭素の腹腔内投与による肝臓線維化の進展をBCGによるプライミングや遺伝子組み換えマウスであるL-/-/A-/-マウスを用いて検討した。その結果、12週間の四塩化炭素投与ではWtマウス、L-/-/A-/-マウス間で顕著な差が得られなかったが、BCGによるプライミングは四塩化炭素の肝臓線維化を相乗的に増強することを見出した。また、他の薬剤による肝障害及び肝臓線維化の影響をアセトアミノフェンの自発経口摂取によって四塩化炭素と同様に検討したところ、Wtマウスに比べてL-/-/A-/-マウスの肝障害が増強されていた。一方BCGのプライミングによって肝障害は減弱されており、この点は四塩化炭素とは逆の結果が得られた。
今後は四塩化炭素用いての線維化に関して、線溶因子の欠損状態をWtマウス及びL-/-/A-/-マウスに導入したマウスで行い、NASHにおける線溶因子の機能を解析していく予定である。またアセトアミノフェンの投与用量を決定し、四塩化炭素と同様に解析する予定である。
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Biomed Res Int
巻: - ページ: 1878964
10.1155/2018/1878964
Ann Vasc Surg
巻: 48 ページ: 204-213
10.1016/j.avsg.2017.10.006