研究実績の概要 |
本研究は、エピジェネティック薬が肝内在性NK細胞の活性に与える影響を詳細に解析し、肝臓切除後に肝臓内NK細胞活性が低下するメカニズムを明らかにするものである。遺伝子抑制たんぱく質EZH2によるエピジェネティック制御が肝内在性NK細胞活性の脆弱性に与える影響を明らかにすることを目的とする。EZH2投与により肝切除モデルにおいて、NK細胞の活性化マーカー(CD69, NKG2D, NKp46)は増強したが、抗腫瘍分子TRAILの上昇は認めなかった。一方でNK細胞上のTRAIL分子には一塩基多型が存在し、様々な疾患と関連があることが報告されている。1595番目のシトシンがチミンに変わるTRAILの一塩基多型と、肝細胞癌肝切除後の予後について検討を行った。TRAILの一塩基多型による背景に差はなく、生存率に差を認めなかったが、TTジェノタイプ群が術後の肝外再発と有意に相関することが明らかとなった(Imaoka Y, Ohira M, et al. Journal of hepato-biliary-pancreatic sciences, 2018; 25(8): 370.)。また、エピジェネティック制御と肝内在性NK細胞の分化について検討するためにマウス肝臓へ放射線照射を行った。マウス肝臓に特異的に放射線照射を行うと、2ヶ月以上にわたり肝内在性NK細胞が消失し、造血幹細胞を移入しても回復しなかった。この結果は、肝放射線照射により肝内在性NK細胞への分化を抑制する環境変化が示唆された(Nakano R, Ohira M, et al. PLoS One, 2018; 13(6): e0198904.)。肝内在性NK細胞のエピジェネティック制御には、一塩基多型や肝臓内環境も重要であると考えられた。
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