研究実績の概要 |
本研究は、エピジェネティック薬が肝内在性NK細胞の活性に与える影響を詳細に解析し、肝臓切除後に肝臓内NK細胞活性が低下するメカニズムを明らかにするものである。遺伝子抑制たんぱく質EZH2によるエピジェネティック制御が肝内在性NK細胞活性の脆弱性に与える影響を明らかにすることを目的とする。 前年度までに、肝内在性NK細胞の抗腫瘍分子TRAILの一塩基多型が肝細胞癌に対する肝切除後の肝外再発に関連することを報告した(Imaoka Y, Ohira M, et al. Journal of hepato-biliary-pancreatic sciences, 2018; 25(8): 370.)。 TRAIL分子は、肝細胞癌の発生に重要な役割を果たしているため、肝内在性NK細胞脆弱化モデル(肝切除、門脈結紮、肝放射線照射)を作成した。肝内在性NK細胞脆弱化モデルマウスに経脾臓的に肝癌細胞株Hepa1-6を投与すると肝内腫瘍が増加する。同マウスに肝内在性NK細胞を外来性に投与することで腫瘍の減少を認めた(Nakano R, Ohira M, et al. PLoS One, 2018; 13(6): e0198904.)。さらに、エピジェネティック制御薬剤EZH2投与を行ったが、抗腫瘍効果の増強は認められなかった。 以上より、肝内在性NK細胞のエピジェネティック制御には、一塩基多型や肝臓内環境も重要であると考えられたが、新規治療法の開発にはさらなる研究が必要である。
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