研究課題
平成30年度中に以下の研究を行った。(1)腸内細菌叢解析研究計画書に沿って、末梢血・門脈血、便の採取を行った。3月末時点で肝細胞癌患者20名、コントロール(転移性肝癌など18名(計38名)から同意を取得し、採取を完了した。便に関しては、検体を全て-80℃凍結保存している。また、一部の検体を用いて次世代シーケンサー解析を開始した。末梢血・門脈血の採取は全例に施行し、総胆汁酸量、分画を測定した。これまでのところ、肝細胞癌患者における末梢血中、門脈血中胆汁酸量の上昇を認め、特に門脈血中の胆汁酸に特徴的な変化を認めることを確認している。(2)星細胞SASP因子分泌による様々な病態との関連解析ヒト肝星細胞株(LX-2)を9種類の胆汁酸の共存下に培養し、検討した。ある状況下において星細胞は強く活性化し、a-SMAの強発現、老化物質(IL-6)の産生増強を認めた。このような環境下においては、星細胞の作用により肝細胞が老化現象を起こしやすいという理論に一致する。さらにこの環境下における星細胞の変化を網羅的に検索する必要性があると考え、それぞれの条件のもとに培養した星細胞の遺伝子変化をDNAマイクロアレイ法を用いて解析した。これらの結果を論文報告した(Secondary Unconjugated Bile Acids Induce Hepatic Stellate Cell Activation. Saga et al. 2018 Int J Mol Sci.)
2: おおむね順調に進展している
腸内細菌叢解析に関しては、肝細胞癌患者およびコントロール患者の採取は順調に症例数を確保できた。また、次世代シーケンサー解析も一部の症例には解析を開始している。胆汁酸の解析も肝細胞癌患者における特徴的な変化を捉えており、さらなる症例集積が望まれる。星細胞培養の研究では、ヒト肝星細胞株(LX-2)の胆汁酸による変化を詳細に検討し、マイクロアレイの結果を踏まえて論文化した。
予定通り研究を進める。門脈血と末梢血のサンプルを慶應義塾大学共同研究グループにてメタボローム解析を行う。糞便の腸内細菌叢解析は大阪市立大学にて行う。これらの結果をまとめて論文報告する予定である。
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Int J Mol Sci.
巻: 19 ページ: E3043
10.3390/ijms19103043