研究課題
肝幹細胞を同定・分離する方法としてCD45陰性、TER119陰性、CD31陰性、EpCAM陰性、ICAM-1陽性細胞から肝幹細胞を分離することに成功した。さらにこの細胞集団から肝幹細胞のクローン細胞を樹立した。この細胞は増殖するのみならず、成熟肝細胞としての機能を発現できることも確認した。この細胞をoncostatin Mで処理したドナー細胞は、レシピエントの肝内において再生置換できることも確認した。体外で増殖させることが可能で、生体に移植して再生し置換現象を再現できた。さらに、正常の機能を発現し得ることは再生医療におけるスーパードナー細胞になりうる可能性が強く示唆される。肝再生置換モデルでは、ガラクトサミンによる慢性肝炎からThy1陽性細胞を分離しドナー細胞として使用する方法論が確立している。ヒトへの臨床応用を念頭にすると、同様の手法は毒性が強く使用できない。再生置換の過程を再現し、遺伝子チップ解析を行うとIL17rbの発現が亢進していた。そこで、リガンドの発現を確認するとIL17bは類洞内皮細胞に発現し、IL25はクッパー細胞に発現していた。一方でThy1陽性細胞の培養上清には細胞外小胞体が分泌されていることを発見した。この細胞外小胞体は小型肝細胞にIL17rbの発現を誘導し、類洞内皮細胞にはIL17bの発現とクッパー細胞にはIL25の発現を誘導した。従って、細胞外小胞体によって肝再生置換現象が誘導されいた。成熟肝細胞からはCD44陽性の小型肝細胞が分離される。細胞の増殖能や分化機能を維持するために細胞外基質に工夫が必要である。マトリゲルを使用して、継代したCD44陽性由来の肝幹細胞は継代後も初代の細胞特性を維持できることを証明した。
2: おおむね順調に進展している
再生置換現象を安定して再現できるようになった結果、様々な機能解析が可能になり、人応用に向けた安全性の高い方法論の確立につながる。同時にドナー細胞の安全性を担保するために、腹腔鏡を用いた手技を導入しているが、手技も安定してきている。最も移植ドナーとして最大の術式である右葉切除も施行できており、順調と考える。
細胞の保存と再利用を確認していく予定である。再生移植に使用するために、促進物質Xの同定と知財確保を目指す。促進物質Xが人における応用可能性に関しても探索的な研究を行う予定である。
<次年度使用が生じた理由> 本研究年度中に部署の異動が生じ、研究継続が困難な期間が生じたため、次年度への研究費の繰り越しを行わざるを得なかった。<次年度の使用計画> 細胞採取及び保存や細胞移植に関する試薬・材料などの物品費としての購入と情報収集・成果発表のための学会参加にかかる旅費などに使用する予定である。また、知財確保や英文校正にかかる人件費・謝金としても使用を予定している。
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