研究課題
職業性胆管癌症例の検討の結果、従来より職業性胆管癌の特徴と報告されてきた、主腫瘍以外の広範囲の胆管に前癌病変や早期癌病変であるbiliary intraepithelial neoplasia(BilIN)やintraductal neoplasm of the bile duct(IPNB)がみられ、さらに慢性胆管 傷害像やγ-H2AX陽性胆管上皮がみられることが明らかとなった。これらから、職業性胆管癌ではDNA傷害を伴う慢性胆管傷害が惹起され、前癌病変や早期癌病変を経て浸潤癌に至ると考えられた。一方、職業性胆管癌症例での多発病変の遺伝子解析結果を比較、検討した結果、著明な遺伝子変異数が確認されるとともに、多中心性発癌と考えられる結節がみられ、臨床経過や病理学的検討から得られた結果を支持するものであった。 胆管癌組織におけるPD-1抗体やPD-L1抗体の発現をみたところ、通常の胆管癌での発現は低かったが、職業性胆管癌でも発現がみられた。また、胆管癌組織あるいはその周囲組織には多くのCD4 やCD8陽性リンパ球(細胞障害性T細胞)浸潤がみられ、それらのリンパ球ではPD-L1の発現がみられた。Combined positive score(PDL1陽性腫瘍細胞+リンパ球+マクロファージ/生存腫瘍細胞数)を測定すると10~90%であり、通常の胆管癌と比較して極めて高いことが判明した。これらの結果から、職業的胆管症例では、強いネオアンチゲンの産生、PD-1やPDL1陽性、著明な免疫細胞浸潤がみられるなど、特異的な癌免疫応答が惹起されており、免疫チェックポイント阻害剤の有用性が推測される。実際、通常の化学療法が無効となった職業性胆管癌1例で、ニボルマブを投与し、その有効性を確認できた。現在、職業性胆管癌に対するニボルマブ投与の医師主導型臨床試験を実施している。
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Surgery
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