研究課題/領域番号 |
17K10675
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
上野 昌樹 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (90405465)
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研究分担者 |
速水 晋也 和歌山県立医科大学, 医学部, その他 (00468290)
川井 学 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (40398459)
山上 裕機 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (20191190)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 肝細胞癌 / ゲノム |
研究実績の概要 |
2017年度は、まず肝細胞癌における原発巣と再発巣との間でのドライバー遺伝子変異の相違の有無を解析し、報告した。結果、肝内転移の形式をとる原発巣と再発巣の間でのドライバー遺伝子変異はほぼ相同していた。一方で、多中心性発生の形式をとる原発巣と再発巣の間でのドライバー遺伝子変異は全く異なっており、同じ肝細胞癌の再発であっても再発形式によりゲノム的には全く異なる肝細胞癌であることを証明した(J Hepatol. 66, 363-373, 2017)。 次に、肝細胞癌の悪性度に関わるEpithelial-mesenchymal transition (EMT)関連遺伝子群の発現解析を、これまでゲノム解析に用いた症例の癌部および非癌部組織を用いて行った。解析対象遺伝子として、これまでに論文で報告されているCDH1・ID2・MMP9・TCF3を挙げた。いずれも遺伝子も、非癌部と比較して癌部における遺伝子発現の程度が有意に高いことを確認した。C型慢性肝炎合併肝細胞癌に絞って、これらの遺伝子発現程度を変数に組み入れた予後予測に関してのロジスティック回帰分析(Risk score=-0.333×[CDH1] -0.400×[ID2]+0.339×[MMP9] +0.387×[TCF3])に当てはめたところ、予後予測が可能であることを示し、現在論文作成中である。 今後は、これらの結果を用い、EMT遺伝子群の発現程度の観点から抽出された予後不良症例グループに対して、種々のドライバー遺伝子変異のクラスター解析を行い、特徴付けが可能かどうかを解析する。これまで報告されている特にCDDPの感受性に関わる遺伝子群の発現パターンを解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヘテロジェナイティーの強い肝細胞癌に対して、肝内転移再発におけるゲノム変異は、原発・転移病巣間でほぼ相同と言えることができ、肝内転移の制御に関しては、原発巣のゲノム変異情報の基づいた治療選択(抗癌剤選択)を行えばよいことがわかった。一方、多中心性発生では、同じ肝細胞癌の再発であっても全くゲノム変異の異なる癌組織と判断されるため、原発巣のゲノム変異情報は使えないこともわかり、今後の抗癌剤感受性遺伝子の同定および活用に際しての知見となっている。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は、当初の予定通り既存の樹立された肝細胞癌株を用いた培養実験を通じて、遺伝子変異に基づく抗癌剤(CDDP)感受性遺伝子発現の変化を評価していく。さらには、新規に臨床応用が可能となった分子標的治療薬(レンバチニブ・レゴラフェニブ)に対する感受性遺伝子の検索を追加で行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでに当科にてストック済みであった癌組織かつcDNAライブラリ化済みのサンプルを、まずは2017年度実験計画の実験サンプルとして用いた。結果的に、これらのサンプルで2017年度予定していた実験計画の概ねを実行できた。よって、2017年度新規調達分の検体を2017年度に計画していた実験に供用する必要が無くなり、これらの新規サンプルはcDNAライブラリ化せず、一旦冷凍保存のまま保存する方針となった。このため、当初計上していたcDNAライブラリ化に係るより経費の節約が可能となった。尚、新規調達分の検体は2018年度以降の別の実験計画に供用する予定である。 2018年度は、当初より計画している“既存の樹立された肝細胞癌株”を用いた抗癌剤(CDDP)感受性遺伝子の発現解析を行う予定であるが、調整金の追加配分を用いて、新規分子標的治療薬(レンバチニブ・レゴラフェニブ)に対する感受性遺伝子の検索を追加で行う予定である。
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