研究実績の概要 |
肝内胆管癌における遺伝子解析を行い、TP53, KRAS, SMAD4, NF1, ARID1A, PBRM1を代表とする32の癌細胞増殖・浸潤に係る遺伝子の有意な変異を認めた。その中で、ARID1A・KRAS・MUC17遺伝子の変異は予後に相関していた。また、BRCA1, BRCA2, RAD51D, MLH1, MSH2などのミスマッチ修復遺伝子関連の異常も約11%の症例に認め、肝内胆管癌における遺伝性発癌の可能性があることや、免疫チェックポイント阻害剤の好対象となる集団があることが分かってきた。また、これまでに行った肝細胞癌の遺伝子解析の結果との対比により、肝内胆管癌細胞の発生起源を探索したところ、これらの約3割は、肝細胞由来であることが判明した(J Hepatol. 2018;68(5):959-969.)。また、分子標的治療薬の有望な対象標的の一つであるFGFRに関しても、数種類の融合遺伝子を同定できた。現在、標準治療終了後の進行再発肝内胆管癌症例に対して、ミスマッチ修復遺伝子の解析を行い、免疫チェックポイント阻害剤の効果との関連性を検討することを計画している。肝細胞癌においては、ヒストンタンパクのメチル化関連遺伝子に関しての解析を行い、KDM5B/JARID1Bの脱メチル化酵素の発現が予後に関連していることが分かり、抑制されていた何らかのactionable geneの再活性化が肝細胞癌の増殖・浸潤に関与していると考えらた。また、in vitroの実験系で肝細胞癌株を用いて、KDM5Bノックダウンを行い、癌細胞の増殖・浸潤が抑制されることが再現された(Oncotarget. 2018;9(76):34320-34335.)。
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