研究課題
原発性肝細胞癌を対象として、上皮間葉移行関連遺伝子(Epithelial-mesenchymal transition genes; EMT)の発現程度と予後の関連性を臨床サンプルを用いて解析した。結果、E-cadherin(CDH1)、inhibitor of DNA binding 2 (ID2)、matrix metalloproteinase 9 (MMP9)、transcription factor 3 (TCF3)の4つのEMT関連遺伝子が、Cox比例ハザードモデルで作成された予測モデル(-0.333×[CDH1]-0.400×[ID2]+0.339×[MMP9]+0.387×[TCF3])により、有意な判別力を持つことが分かった(J Surg Res. 2020;245:302-308.)。さらに、これらEMT関連遺伝子の発現パターンを亜型分類し、分子標的治療剤(特に免疫チェックポイント阻害剤)との感受性との相関について解析中である。胆膵の領域において、炎症性免疫マーカーの発現パターンと術後予後との関連性を解析し、術前補助化学療法後にリンパ球/単球比が低くなった症例は、その後の術後予後は不良であり、集学的治療中の免疫バランスを維持が重要であることを報告した(Surgery. 2019;165:1151-1160.)。さらに、これらを踏まえて、原発性肝癌における腫瘍免疫抑制のメカニズムとドライバー遺伝子変異との関連性を解析し、腫瘍関連マクロファージ浸潤型・CTNNB1変異型・ cytolytic activity型・regulatory T cell浸潤型の4つの亜型に分類され各々における腫瘍免疫関連遺伝子の発現パターンを解析した(EBioMedicine. 2020;53:102659. doi: 10.1016/j.ebiom.2020.102659. )。
3: やや遅れている
これまでの研究実績を踏まえ、令和元年度では、さらに原発性肝癌に対して、分子標的治療剤投与によるPD-1/PDL-1発現誘導の程度を分析し、その相関性を解析する予定であったが、術前分子標的治療剤投与の対象となった臨床サンプルの収集が計画よりやや遅れており、信頼度の高い統計解析を行うには、未だ不十分な臨床サンプル数となった。
研究期間の1年の延長を申請し、承認をいただいた。引き続き、対象となる症例の臨床サンプルの集積に努め、最終解析及び学会での発表を今年度に行うこととする。
本研究課題は1年間の延長申請を行い、承認されている。延長期間中に使用する物品は購入済みであり、次年度使用額26,783円は、主に課題報告に際しての旅費及び論文投稿費に充当する予定である。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件)
J Surg Res.
巻: 245 ページ: 302-308
10.1016/j.jss.2019.07.077.
EBioMedicine
巻: 53 ページ: -
10.1016/j.ebiom.2020.102659.
Surgery
巻: 165 ページ: 1151-1160
10.1016/j.surg.2018.12.015.