神経内分泌腫瘍に対する新規治療として、第三世代増殖型遺伝子組換えHSV-1(T-01)によるウイルス療法の効果検討を行った。 (1)In vitroでは、ヒト神経内分泌腫瘍細胞株(3種)を用いて、腫瘍細胞に対するT-01の殺細胞効果および細胞内でのウイルス複製能の検討を行った。(2)In vivoではヒト神経内分腫瘍の細胞株を用いて、ヌードマウスの皮下腫瘍モデルを作成し、T-01投与後の抗腫瘍効果を検討した。 結果として、(1)T-01は神経内分泌腫瘍の細胞株に対し、高い殺細胞作用を示した。また、低ウイルス量(MOI:0.01)において、細胞内でのウイルスの増幅を認めた。 (2)ヒト神経内分泌腫瘍細胞を移植したヌードマウス皮下腫瘍モデルにおいて、T-01を投与した結果、腫瘍増殖の抑制効果が見られ、効果はウイルスの濃度、また投与回数に依存して強く見られた。また、腫瘍が増殖するに従い、非治療群では体重が有意に減少を認めたが、治療群では体重減少が見られなかった。 採取した腫瘍組織の病理所見では、ウイルスが腫瘍細胞内で増幅しており、その周囲で腫瘍細胞が破壊されている像が認められた。 T-01投与の14日目では治療群と非治療群の腫瘍体積の比較で有意な違いは見られないが、血清CEA・Chromogranin AをELISA法で検討したところ、これら腫瘍マーカーが非治療群でのみ有意に上昇していた。腫瘍内のCEA染色陽性細胞の比率を比較検討したところ、治療群でもCEA染色は陽性となるが、その面積比率は非治療群と比較して有意に小さな面積であった。これらのことから、治療群におけるCEA産生は腫瘍内・血液内の両方を抑制していた事が示唆された。 以上の事から神経内分泌腫瘍の増殖はT-01投与によって抑制されうることが示唆されたと考える。これらの研究内容をOncotargetに投稿し掲載された。
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