研究課題/領域番号 |
17K10683
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
折茂 達也 北海道大学, 医学研究院, 特任助教 (80711861)
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研究分担者 |
若山 顕治 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (50646544)
蒲池 浩文 北海道大学, 大学病院, 講師 (60374237)
横尾 英樹 北海道大学, 大学病院, 講師 (70399947)
神山 俊哉 北海道大学, 医学研究院, 准教授 (80322816)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | EB1 |
研究実績の概要 |
EB1は1995年に大腸癌において腫瘍制御タンパクであるAPCと結合するタンパク質として見出された。肝細胞癌においてEB1が生物学的悪性度と関連し、他にもEB1の過剰発現が肺癌の放射線抵抗性に関わるとの報告がなされた。肺癌においては、EB1はアポトーシス制御に関わり、EB1の過剰発現が放射線照射による細胞死を抑制するという機序が提唱されている。反対にEB1発現を抑制すると活性酸素種(ROS)の産生が促され放射線照射による細胞死が促進するとの報告がなされている。過去に膵癌細胞株のプロテオミクス解析で、高悪性度膵癌細胞株にEB1が高発現していることを確認しており、膵癌の放射線抵抗性の分子背景にもEB1が関与する可能性がある。本研究ではEB1の過剰発現が膵癌の放射線抵抗性に関与するという仮説を立て、EB1と膵癌放射線抵抗性との関連を確立することを目的とする。 術前に化学放射線療法を行った膵癌切除症例17例を対象にEB1の免疫染色を施行した。各症例でEB1の染色強度と割合を測定し、強度×割合が6以下をEB1陰性、7 以上をEB1陽性とした。EB1陰性は10例、EB1陽性は7例であった。EB1と放射線効果判定(Grade1,2a,2b,3)との関連を検討したが、EB1と放射線効果の間には相関関係は見られなかった(R=-0.0236,p=0.928)。EB1と予後との関連も同様に解析したが、生存、再発ともにEB1の発現の有無では有意差を認めなかった(p=0.811,p=0.575)。EB1の機能解析を行うため、膵癌細胞株として細胞としてpanc-1 と miapaca-2を選定した。Panc-1についてはEB-1 KO株を確立し、Panc-1 KO株に対しての再発現、WTに対しての強制発現を確立した。Miapaca-2についてもKO株を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
EB1の膵癌に対する免疫染色は過去に報告例がなく、抗体の選定、免疫染色の条件設定に困難を伴い、長期間を要した。EB1免疫染色の条件設定は何とか確定することができたが、免疫染色の結果は、仮説と異なりEB1の発現と放射線抵抗性の間には関連性がなかった。EB1の陽性判定基準を各種検討したが、同様の結果であった。そのためEB1と膵癌との関連性についてin vitroで再検討をすることにした。膵癌細胞株として、panc-1 と miapaca-2 を選定し、KO株をそれぞれ作成することにした。Panc-1についてはKO株が完成したが、その後COVID-19の影響で長期間実験の停止を余儀なくされた。COVID-19の影響が落ち着いた後実験を再開しMiapaca-2についてもKO株を確立した。
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今後の研究の推進方策 |
膵癌において免疫染色の結果では、EB1と放射線抵抗性の間に相関関係はなかった。そのため当初の仮説とは異なる視点からの検討が必要になり、細胞株での検討に方向性を移行する。また膵癌細胞株を用いてwestern blotを行い、EB1が細胞株のcharacterに及ぼす影響を解析する。膵癌細胞株であるpanc-1 に関してはKO株が確立したが、その後COVID-19の影響で長期間実験の停止を余儀なくされた。もう一つmiapaca-2 についてもKO株がその後完成したので、それぞれの細胞株についてWT→強制発現、KO→再発現の系を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)免疫染色を行ったが、その結果は仮説と異なる結果であった。そのために当初の研究計画は大幅な見直しを必要とし、異なる視点からの研究が必要な状況となった。当初の研究計画を進めることができなくなったため、in vitroの視点からの細胞株実験を行うこととなり、次年度使用額が生じることになった。今年度はCOVID-19の影響を大きく受け、実験の遂行が困難となったことも大きな理由である。 (使用計画) 次年度使用額については、細胞株のin vitro実験に必要な物品の購入や解析費用に使用する予定である。
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