研究実績の概要 |
本研究の目的は、インスリノーマにおけるプロゲステロン受容体発現の意義を多角的に解析し、これを標的とする新たな治療法の確立するための基盤を構築することにある。検討項目として、1.プロゲステロン受容体発現インスリノーマ症例における臨床所見の解明、2.プロゲステロン受容体ノックダウン処置によるインスリノーマの機能の検証、3.プロゲステロン受容体を標的とする治療法の探索、以上の三点を予定した。82例のヒトPan-NEN組織 (非機能性膵神経内分泌腫瘍: non-functioning Pan-NEN: 以下NF: 54例、インスリノーマ28例)を対象とした。PgR発現はインスリノーマでNFに比して有意に高かった (p<0.001)。NFにはinsulin発現を伴うIns+NFと、insulin発現のない Ins-NF が存在し、前者が後者に対して PgR発現が有意に高かった(p=0.03)。二重免疫染色では、インスリノーマと正常膵ラ氏島 におけるPgR発現率が、Ins+NFにおけるそれより高かったが、全insulin発現細胞に対する PgRとinsulinの共発現率は、Ins+NF、インスリノー マ 、正常膵ラ氏島の間で相違は認められなかった。これら得られた結果をもとに平成30年度は論文を作成。Journal of Steroid Biochemistry and Molecular Biologyに掲載された。 また、肝胆膵領域で稀少疾患であり胆管に発生するIPNBに関して、膵疾患であるIPMNと相同性が取りざたされており、この性質を解明するために、免疫染色および臨床的特徴を照らし合わせる研究も同時に進めることとした。IPNBをtype間で検討。p53, p16, SMAD4, RNF43, CDX2, β-catenineなどの免疫組織化学染色を行い、それらの発現異常を調べた。このうち、p53陽性率は9.1%(type1) vs 33.3%( type2) [p=0.0491]、SMAD4陽性率は0%( type1) vs 26.7%( type2) [p=0.0078]と有意差を認めた。その他はtype間で有意差は認められなかった。これら得られた結果をもとに論文を作成。Journal of Pathologyに掲載された。
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