研究課題
膵癌が難治性であることは周知のことであるが、近年膵癌転移症例のうちオリゴ転移例(転移巣の数が少ない症例)や肺転移単独例に対し手術により良好な成績が得られたとする報告があり、遠隔転移を伴う膵癌の中にも手術治療が奏功する症例がある可能性が示唆されている。これら転移を起こしやすい膵癌とそうでない膵癌を区別しうる臨床病理学的因子の探索を行った。当院で膵癌に対して根治的手術を施行し、臨床検体と研究に関する包括同意が得られている172例を対象にして後ろ向き観察研究を行った。局所限局性は病変が単発で6ヶ月以上局所にとどまり遠隔転移を発症しないことを条件としたところ、再発症例109例のうち局所限局性の再発経過をとった23例と106例を比較すると、それぞれの臨床病理学的背景について差はないが、再発時期に関しては差がないにもかかわらず、その後の生存期間は有意に局所限局群において長いという結果が得られた。しかし、初回手術時の時点でオリゴ転移例に臨床病理組織学的に有意な特徴を見出すことはできなかった。そこで、複数回の手術治療を行ったオリゴ転移症例についエクソーム解析を行い、遺伝子変異プロファイルの縦断的な解析を行った。変異プロファイルの系統樹による解析から、転移巣から次の転移巣が生じていること、また転移先で新たなサブクローンが形成されていることが示唆された。これらはオリゴ転移症例が次の転移巣を形成するまでタイムラグをもつ理由として妥当なものであると考えられる。またこれらの因子が明らかになることによって、より外科切除が有用な症例を選択できる可能性がある。これらの内容は近日論文投稿する予定である。今後はより多数例の検討を行いオリゴ転移症例の転移形式について集積することを計画したいと考えている。
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