研究課題/領域番号 |
17K10690
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
高野 可赴 新潟大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (30606306)
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研究分担者 |
滝沢 一泰 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (30706437)
小林 隆 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (40464010)
若井 俊文 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50372470)
坂田 純 新潟大学, 医歯学系, 講師 (70447605)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 腫瘍関連マクロファージ / マクロファージ遊走阻止因子 / 膵癌 / 腫瘍微小環境 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「膵癌の腫瘍微小環境形成機序におけるM2分化型の腫瘍関連マクロファージ(tumor-associated macrophage;TAM)、マクロファージ遊走阻止因子(macrophage migration inhibitory factor ;MIF)、MFG-E8の臨床的意義を解明し、新たな膵癌治療の開発への科学的基盤を確立する」ことである。 本年度は、膵癌組織内におけるMIFとTAMの発現を検討し、膵癌切除例におけるMIFとTAMの臨床的意義を明らかにすることを目的に研究を行った。 治癒切除を企図した通常型膵癌67例(R0 55例、 R1 12例)を対象としホルマリン固定、パラフィン包埋ブロック標本を用い連続切片を作製し、HE染色とMIFに対するモノクローナル抗体、M1分化型TAMのマーカーであるCD68、M2分化型TAMのマーカーであるCD163、CD204に対するモノクローナル抗体を一次抗体として用い免疫組織化学を行った。 結果は、MIF発現性と治療成績について検討すると、MIF高発現群とMIF低発現群の無再発生存期間の中央値は各々19.6か月、51.9か月(p = 0.014)、生存期間中央値は各々26.3か月、59.8か月(p = 0.035)と有意にMIF高発現群の方がMIF低発現群に比べ治療成績が不良であった。また、初再発形式として肝再発を認めた症例はMIF高発現群18例、MIF低発現群1例とMIF低発現群に比しMIF高発現群のほうが肝再発は有意に高頻度であった(p = 0.025)。全生存期間に対する多変量解析では、MIF高発現は独立した予後不良因子であった(p =0.028, hazard ratio (HR) 2.500, 95%信頼区間 1.103-5.667)。以上の結果から、治癒切除を企図した通常型膵癌症例において、MIF発現は独立した予後不良因子であることが示唆された。 以上の研究成果について、第117回日本外科学会学術集会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標症例数(100例)には到達していないが、膵癌切除例67例を対象としたHE染色、MIFとM1分化型TAMのマーカー(CD68)、M2分化型TAMのマーカー(CD163、CD204)の免疫組織化学は終了した。また、解析により治癒切除を企図した通常型膵癌症例においてMIF高発現群は低発現群に比べ肝再発が有意に高頻度であり、MIF発現は独立した予後不良因子であることが示唆された。以上の研究成果について、第117回日本外科学会学術集会で発表し、現在、英文論文を作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の目標症例数には到達していないが、現状の結果から膵癌におけるMIF発現の意義についての解析が進み、現在、英文論文を作成中である。今後、論文作成の過程で膵癌におけるMIF発現、TAMの分布について追加症例の必要があれば、追加症例の免疫組織化学行う予定である。 また、MIF発現と膵癌組織内におけるTAMの亜型密度との関連について検討し、学会発表する予定である。 研究費は免疫組織化学に用いる抗体、学会発表にかかる旅費、英文論文に関わる費用などに使用する予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
MIFとM1分化型TAMのマーカー(CD68)、M2分化型TAMのマーカー(CD163、CD204)の免疫組織化学について、当初の目標症例数まで必要とせず、物品費として経費に余剰ができたから。 次年度使用額の研究費は学会発表にかかる旅費、英文論文に関わる費用などに使用する予定としている。
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