研究課題/領域番号 |
17K10691
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
石川 博補 新潟大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (80769399)
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研究分担者 |
小林 隆 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (40464010)
若井 俊文 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50372470)
坂田 純 新潟大学, 医歯学系, 講師 (70447605)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 胆管癌 / 胆管生検試料 / γH2AX / 53BP1 |
研究実績の概要 |
胆管癌は術前に癌の広がりを精査した上で胆管切離線の設定を行う必要がある。しかし、胆管上皮の組織生検材料は非常に小さく、閉塞性黄疸による炎症異型が加わることもあり、非癌・癌の判断が困難となる場合がある。申請者らは、胆管癌の上皮内癌と浸潤癌とではDNA二重鎖切断部に対するp53-binding protein 1(53BP1)による早期DNA損傷修復機構に相違点があることに着目し、術前の胆管上皮生検試料における早期DNA損傷修復機構を二重蛍光免疫染色で評価することで、術前胆管生検試料における確証的な良悪性判定法が確立されるものと考え、これを証明することを研究目的とした。 平成30年度までに以下の研究・解析を行った。DNA二本鎖切断のマーカーであるγH2AXが、正常組織および上皮内癌よりも、浸潤癌において高レベルで検出されることに着目し、胆管上皮生検試料におけるγH2AXの発現について調べた。肝外胆管癌6例、胆管炎7例、正常胆管組織5例の生検標本に対し、γH2AXモノクローナル抗体による免疫組織化学染色および蛍光免疫組織染色を施行し、核内発現様式を核内ドット状集積、核内びまん性集積の2つに分類した。γH2AX陽性細胞のlabeling index(以下LI)を、各発現様式について測定した。癌組織、炎症組織および正常の生検組織間で、核内ドット状集積を伴うγH2AX陽性細胞のLIは有意に異なっていた。一方、核内びまん性集積を伴うγH2AX陽性細胞のLIは、3つの異なるタイプの組織間で有意差はなかった。核内ドット状集積を伴うγH2AX陽性細胞のLIは、良性および悪性の胆管組織を識別するための有用なバイオマーカーとなり得る可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胆管生検組織標本におけるDNA損傷部をγ-H2AXモノクローナル抗体による免疫組織化学染色で検出する作業はすでに終了した。途中経過として学会発表(Annual Academic Surgical Congress, Jan. 2017, Florida)を行った。現在、53BP1とDNA損傷部の共局在率に評価のために、53BP1の核内発現様式を蛍光免疫組織染色で検出する作業を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度以降は、当科にて過去に収集された胆管上皮生検試料を用いて、胆管癌の術前胆管生検試料における確証的な良悪性判定法を確立すべく解析を進めていく。 具体的には 1.①病理診断で正常胆管上皮、炎症異型上皮、胆管癌とされた症例の胆管上皮生検試料を用いて、早期DNA損傷修復仲介因子である53BP1に対する特異的抗体による免疫組織化学・蛍光免疫組織染色を行う。②胆管上皮生検試料における53BP1の核内発現様式を検出し、核内ドット状集積、核内びまん性集積に分類して記載する。③正常胆管上皮、炎症異型上皮、胆管癌症例における53BP1の核内発現様式を比較し、解析する。 2.①病理診断で正常胆管上皮、炎症異型上皮、胆管癌とされた症例の胆管上皮生検試料を用いて、癌組織において高発現しているとされるγH2AXおよび53BP1に対する特異的抗体による二重免疫蛍光染色を行う。②胆管上皮生検試料におけるγH2AXと53BP1の共局在率を記載する。③正常胆管上皮、炎症異型上皮、胆管癌症例におけるγH2AXと53BP1の共局在率を比較し、解析する。
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