研究課題
平成30年度までに以下の研究解析を行った。DNA二十鎖切断のマーカーであるγH2AXが、正常組織および上皮内癌よりも、浸潤癌において高発現しているころに着目し、胆管上皮生検試料におけるγH2AX発現について調べた。肝外胆管癌6例、胆管炎上皮7例、正常胆管組織5例の生検標本に対し、γH2AXモノクローナル抗体による免疫組織化学および傾向二重免疫染色を施行し、核内発現様式を核内ドット状集積、核内びまん性集積の2つに分類した。γH2AX陽性細胞のlabeling index(以下LI)を、各発現様式について測定した。癌組織、炎症上皮および正常胆管組織の3群間で、核内ドット状集積を伴うγH2AX陽性細胞のLIは有意に異なっていた。また、これら3群中2群間のLIについてpost hoc testを行い,癌組織と正常上皮組織との間で有意な差を認めた。一方、核内びまん性集積を伴うγH2AX陽性細胞のLIは、3つの異なる組織間で有意差はなかった。また、Ki67、p53陽性細胞のLIも測定し、p53 LIは3群間で有意差は認めなかった。Ki67陽性細胞のLIは3群間で有意差は認め、3群中2群間のpost hoc testでは,炎症上皮と正常上皮組織との間で有意な差を認めた。以上から、癌部と正常胆管組織の鑑別には、γH2AXが有用なバイオマーカーになる可能性があることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
胆管生検組織標本におけるDNA損傷部をγH2AXモノクローナル抗体による免疫組織化学で検出する作業は終了した。さらに、癌部・非癌部の鑑別に用いられることがあるKi67およびp53の免疫組織化学も行い、癌部・非癌部組織における発現解析も終了した。途中経過を日本外科学会定期学術集会(2018.04, 東京)および第73回日本消化器外科学会総会(2018.07, 鹿児島)にて発表した。現在、53BP1とγH2AXの共局在率を評価するため、53BP1およびγH2AXの蛍光二重免疫染色を行っている。
令和元年度は、53BP1とγH2AXの共局在率を評価するため、53BP1およびγH2AXの蛍光二重免疫染色をすすめ、評価を行う。また、これまで行った免疫組織化学の結果と比較解析し、胆管生検試料における良悪性の判定法としていずれが優れているかを検証する。これらの結果をまとめ、学会発表および英文誌への論文投稿を行う。
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