研究課題/領域番号 |
17K10702
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
三好 圭 九州大学, 大学病院, 助教 (70755272)
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研究分担者 |
江上 拓哉 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (40507787)
宮坂 義浩 九州大学, 大学病院, 助教 (40507795)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 膵癌 / 癌間質相互作用 / エクソソーム / 肝転移 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、豊富な間質を有する膵癌において、膵癌微小環境由来のエクソソームが癌間質相互作用、臓器特異的転移において果たす役割を解明し、その機序に着目した微小環境改変による新たな膵癌治療戦略を開発することである。 本年度はヒト膵癌術前症例から採取した膵液中のエクソソームに含まれるmicroRNA(ex-miR)についてマイクロアレイで網羅的解析を行い、ex-miR320a、320b、361、145、29cなどの発現が慢性膵炎と比較して有意に上昇していることを明らかにした。検出されたエクソソームの由来細胞については癌細胞、間質細胞にいずれかについて現時点では明らかではないものの、膵癌組織由来のエクソソームから特異的に分泌されるエクソソームの候補を挙げることができた。転移臓器特異性にかかわるエクソソームについては同定できていないが、肝転移に特異的に関わる因子を検討するため、膵癌細胞を脾注した肝転移モデルマウスを用いた実験を行った。肝転移モデルでは膵癌細胞に発現したCD110が肝細胞に発現したCD110のリガンド、thrombopoietin (TPO)を介して膵癌細胞の血管外遊出と増殖を促進し、肝転移形成に関与していること、さらにその作用にはERK1/2-MYCシグナル経路が関与していることなどを明らかにした。ヒトの膵癌切除標本を用いた病理学的検討においても、膵癌細胞のCD110発現と肝転移の増加、予後不良に関連があることなどを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに膵癌間質をターゲットとしたマイクロアレイ解析から膵星細胞の活性化、不活性化に関与する可能性のある遺伝子発現変化について同定し、膵癌患者の膵液から採取したエクソソームを用いて膵癌特異的にエクソソーム内へ分泌されているmiRNAを数種類にわたって同定することができた。また、肝転移における転移臓器特異性にかかわる因子として膵癌細胞、肝細胞それぞれのタンパク発現とそれに関わるシグナル経路についても明らかにしてきた。 当初予定していた、膵星細胞に特化したエクソソームの検出とその機能解析、臓器特異性に関与するエクソソーム含有タンパク質やmiRNAの特定とその分子を標的とした治療開発などについては新たな進展がなく、治療の開発までを目標とした本研究計画において現時点では計画からやや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
膵星細胞が分泌するエクソソームの抽出、膵液内エクソソームの由来細胞の同定など、膵星細胞に特化したエクソソームの検出、転移臓器特異性に関わるエクソソーム内分子やmiRNAの同定・解析を引き続き試みていく。また、同定されたmiRNAが局所での微小環境に与える影響や、転移先臓器で与える影響などについて、in vitro, in vivo実験あわせて検討していく。 並行して、現在までに同定された肝転移に関する転移臓器特異性分子とその詳細機序についてさらに解析を進め、マウスへの薬剤投与、微小環境側因子の遺伝子ノックダウンなどから微小環境改変による膵癌制御治療法の開発について検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた、膵星細胞に特化したエクソソームの検出とその機能解析、臓器特異性に関与するエクソソーム含有タンパク質やmiRNAの特定とその分子を標的とした治療開発などについては新たな進展がなく、研究計画に遅れが生じているため。 次年度は主に研究用試薬、器材、受託解析等に使用する予定である。
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