研究課題
膵癌組織はdesmoplasiaと呼ばれる過剰な間質増生を特徴とし、癌生存に有意な微小環境を提供している。近年、原発巣の癌細胞由来のエクソソームが遠隔臓器で前転移ニッチ(pre-metastatic niche) を誘導することが明らかになった。本研究では、膵癌微小環境由来のエクソソームが癌細胞の転移臓器特異性の決定機序に与える影響を検討し、この機序に着目した微小環境改変による新たな膵癌治療戦略を開発することを目的とする。本年度は、膵癌転移巣でも早期から誘導されてくる線維芽細胞(CAFs)に関して、活性化CAFs対静止状態のCAFsをマイクロアレイで網羅的解析を行い、活性化CAFsで有意に上昇している複数の候補遺伝子を明らかにした。転移臓器特異性にかかわるエクソソームについては前年度に膵癌由来の膵液中エクソソーム抽出とmiRNA発現解析について成功しているが、癌関連膵星細胞上清や、転移巣由来線維芽細胞に特化したエクソソームの解析に関しては行えていないが、膵癌肝転移に関わる微小環境関連因子の検討として、微小環境中に豊富に存在している免疫細胞、特に好中球の転移誘導における役割について検討を行った。膵癌細胞を脾注した肝転移モデルマウスを用いた実験では、脾注肝転移モデルでは癌細胞注入後1日目から微小転移巣に好中球の集簇がみられたのに続いて、2日目以降にα-SMA陽性のCAFsが認められ、好中球が遠隔臓器に癌関連線維芽細胞の誘導を促進し、肝転移形成を促進している可能性が示唆された。
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International Journal of Oncology
巻: 56 ページ: 596-605
10.3892/ijo.2019.4951