研究課題/領域番号 |
17K10703
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
足立 智彦 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 講師 (60437879)
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研究分担者 |
小坂 太一郎 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (00437881)
江口 晋 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (80404218)
大野 慎一郎 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (90567174)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ヘリコバクタービリス |
研究実績の概要 |
【背景・目的】胆道癌は予後不良疾患であり、肝内結石症や膵胆管合流異常はリスク因子として知られている。Helicobacter属菌(H.bilis)は、ヒトでは菌の同定はなされておらずDNA検出のみにとどまっているが、その疫学的検討から胆道発癌との関連が示唆されている。しかし、H.bilisと胆道発癌関連機序の基礎的検討は行われていない。今回H.bilisと胆道発癌の機序を解明すべく下記検討を行った。 【方法】購入したヒト不死化胆管上皮細胞(MMNK-1)にH.bilisを各条件で共培養、細胞由来の炎症性サイトカインや活性酸素種、細胞増殖活性をそれぞれELISA法、蛍光法、WST-1 assayにて検出、非共培養群と比較検討した。 【結果】非共培養群と比較し上清中のTNF-α分泌に有意差はなかったが、IL-6、IL-8濃度は共培養後6時間(IL-6;23.4±9.0 vs 95.7±58.4 pg/ml、IL-8;111.8± 61.5 vs 302.3±129.1 pg/ml, p<0.05)、24時間(IL-6;24.3±12.2 vs 271.1±286.4 pg/ml、IL-8;167.6±78.7 vs 1085.1±1047.1 pg/ml, p<0.05)で有意に高値、共培養24時間での活性酸素種生成は1:1.17(p=0.05)と有意に高値、共培養24時間後の細胞増殖活性は1:1.05(p<0.05)と有意に亢進、細胞数は、16% (p<0.05)有意に増加、一方24時間後のDNA損傷(8-OHDG)は変化なく、活性酸素種によるDNA損傷はみられないと判断した。DNA修復に関しては、MUYTH/ NUDT1は両群間で変化を認めないが、OGG1はH.bilis添加にて1:0.75(p<0.05)と有意な酵素活性抑制を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ヘリコバクタービリスDNAとの接触実験を行ってきたが望むべく結果を得られず、胆管細胞とヘリコバクタービリス菌体との接触実験とし、上記結果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
In vitroでのヘリコバクターモデルを作成し、生体内での変化を改めて検討する予定。予備実験として、短期モデル作成を行い、1×107CFUのH.bilis菌液を作成、7週齢雌ゴールデンハムスター(胆管解剖/胆汁組成がヒトと類似)に対し、H.bilis菌液を胃管を用いて胃内に投与(1回)投与後1、3、7日で犠牲死させ、胆道、肝の検体を採取。H.bilis正着率についてPCR、検鏡法で検討し、PCR法(胆道)では Day1:2/3 Day3:2/3 Day7:3/3の生着を確認したが、検鏡法(肝内胆管)ではDay1: 0/3 Day3: 0/3 Day7: 0/3と菌体を確認できてはいない。
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次年度使用額が生じた理由 |
DNAとの接触実験において進行遅延が生じているために次年度使用額が生じた。今後研究計画追加変更にて、ヘリコバクタービリスの in vivo感染モデル作成、生体内でのヘリコバクタービリスが胆道上皮に及ぼす影響を検討する。上記実験の遂行に係る消耗品の購入費用に加え、研究結果を学会発表する際の旅費、英文誌投稿に関わる校閲費、実験補助の人件費等に使用する。
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