研究課題
膵癌におけるフコシル化とそれを制御するフコース転移酵素(Fucosyltransfearase, FUT)の発現と癌化の関係を解明し、FUT抑制による新規治療薬の開発が目的である。Ⅰ.膵癌の癌化にフコシル化が与える影響(膵癌切除標本を用いた検討)。1.癌部と正常膵管部のフコシル化に関連するレクチン発現の比較:Laser microdissection法で採取した組織において、レクチンマイクロアレイで癌部は正常膵管部よりフコシル化関連レクチン(AOL, AAL)が高発現であった。2.膵癌の癌化に関与するFUTの同定と臨床病理学的因子との関係:癌部は正常膵管部よりFUT8が高発現で、FUT8の発現はリンパ節転移の有無との相関を認めた。またFUT8高発現群は全生存には差を認めなかったが、無再発生存は有意に不良であった。Ⅱ:膵癌の浸潤や転移とFUTの関係1. ヒト膵癌細胞株におけるFUTの増殖能、細胞浸潤能、接着能に与える影響:膵癌細胞株のうちFUT8が高発現しているPK1およびPK8を用いてFUT8の発現を抑制したところ増殖能は変わらず、浸潤能が有意に低下した。2. ヌードマウスへの膵癌細胞株の腹膜播種モデルにおけるFUT抑制による腫瘍の増殖、浸潤抑制効果の検討:FUT8の発現を抑制した膵癌細胞株PK-1はコントロールと比較し、腹膜播種の大きさや数が有意に抑制された。以上の検討よりFUT8が膵癌における浸潤や転移に関わる因子である可能性が示唆された。
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Surgery Today.
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10.1007/s00595-019-01953-z.