研究課題
平成30年度は、ヒト膵癌細胞株PK59をALDEFLUOR kit (STEMCELL Technologies Inc)で処理し、ALDH高発現細胞をsorting後、sphere形成能を有する細胞のみを分離し、癌幹細胞を培養した。樹立した癌幹細胞を接着プレートで再培養し、再分化能を持つことを確認した。また、PK59由来癌幹細胞株が親株に比して、5FUに対する耐性を有することを確認した。PK59由来癌幹細胞株と親株での遺伝子発現をmicroarrayを用いた網羅的解析により比較検討したところ、種々のイオン輸送体が癌幹細胞において高発現していることを確認した。イオンチャンネルに関連する遺伝子のうちカリウムチャネル、特に電位依存性カリウムチャネルの発現上昇に着目し研究を進めた。電位依存性カリウムチャネルKCNB、KCNC、KCNDのmRNAレベルがPK59由来癌幹細胞株で著明に上昇していることをRT-PCRで確認。電位依存性カリウムチャネルの阻害薬である4-aminopyridineをPK59由来癌幹細胞株と親株に各々投与すると, 癌幹細胞株においてより強い増殖抑制効果が確認された。4-aminopyridineは多発性硬化症に対し臨床で用いられている薬剤であり、現在その癌幹細胞抑制効果をin vivoで検証している。一方で、消化器癌におけるSodium iodide symporter (Gastric Cancer. 2019)、Anion exchanger 2 (Oncotarget. 2018)、Chloride intracellular channel 1 (Oncotarget. 2018)、Aquaporin 1 (Oncotarget. 2018)などのイオン輸送体・pH制御因子・水輸送体の機能解析・臨床病理学的意義を解明した。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画のうち、ヒト膵癌細胞株を用いた癌幹細胞の作製と、癌幹細胞特異的に発現するイオン輸送体の同定、その阻害剤による癌幹細胞抑制効果を検証する基礎実験は、ほぼ終了している。また、消化器癌における種々のイオン輸送体・pH制御因子の機能解析も進展しており、研究成果は既に国内外の学会で発表し、英文雑誌にも投稿・掲載されている。現在、膵癌幹細胞株において高発現するKCNB、KCNC、KCNDなどの電位依存性カリウムチャネルに対する阻害薬、4-aminopyridineの抗癌幹細胞効果をin vitro、in vivo実験系で検証しており、研究目的・研究計画はおおむね順調に進展していると考える。
次年度以降は、ターゲットとして選択したKCNB、KCNC、KCNDなどの電位依存性カリウムチャネルの阻害剤4-aminopyridineの、癌幹細胞特異的な増殖抑制効果をさらに検証するとともに、癌幹細胞内イオン濃度変化を介する細胞周期・アポトーシス制御機構の解明を試みる。また、ヒト膵癌組織における癌幹細胞マーカーの発現解析と、イオン輸送体発現との相関性を解析する。更に、in vivoにおける、阻害剤・RNA干渉を用いたイオン輸送体制御による皮下腫瘍成長抑制効果について検証するとともに、各条件の皮下腫瘍から癌幹細胞を抽出し、self-renewal capacityを解析する予定である。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 11件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (9件)
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