研究課題
膵癌は本邦で毎年3万人以上が罹患し、膵癌全体の5年生存率は5%未満であり最も治癒率の低い難治性癌である。膵切除術によって治癒切除された症例でも5年生存率が10%程度と言われていることから、術後の補助化学療法が非常に重要である。本邦で行われた膵癌手術症例の術後補助化学療法の無作為化比較試験では治療成績の向上が得られたが、その効力は十分とは言えない。一部には再発が無く長期生存が得られている症例が存在するが、どのような症例で良好な治療効果を得られるかわかっていない。良好な治療効果を予測する因子が明らかになれば、適切な薬剤の選択や、不要な有害事象の回避などを通して治療を個別化することができる。本研究ではマイクロRNAの網羅的解析から膵癌の術後補助化学療法の効果と感受性に関わる分子を探索し、治療効果や予後を予測するバイオマーカーとして利用することで膵癌治療戦略の構築に貢献することを目的としている。膵癌の治癒切除後に術後補助化学療法を行った症例から、5年以上無再発の症例と2年以内に再発した症例を抽出し、マイクロRNAの発現と臨床病理学的因子、予後、治療効果との関連性を探索した。組織中のマイクロRNAの網羅的発現解析を行い、再発群と無再発群の間で発現差を比較し探索したが、治療効果を層別化できるマイクロRNAの同定には至らなかった。発現差の条件を緩めて候補マイクロRNAを選抜し、多数検体を用いて検証することで治療効果に関連したマイクロRNAを絞り込んでいくことができると考えている。
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