研究実績の概要 |
本研究の目的は、膵癌におけるKIAA1199(CEMIP/HYBID)の発現パターンと予後を含めた臨床病理学的因子との関連を明らかにし、その発現を調節する因子を同定し、さらに機能的役割について解析することである。以下にこれまでの研究実績を述べる。
1. KIAA1199の発現が膵癌組織で亢進しており、発現が高い患者の予後は不良であった(Koga et al, Pancreatology 2017)。2. 膵癌細胞においてKIAA1199の発現は炎症によって誘導され、膵癌細胞の増殖、遊走、浸潤能を増強した(Kohi et al. Oncotarget 2017)。3. 膵癌の一部に、KIAA1199を含めたヒアルロン酸分解酵素および産生酵素の発現がすべて上昇しているフェノタイプが存在することを発見し、ヒアルロン酸代謝亢進フェノタイプ(HAMP)と名付けた(Kudo et al., Oncotarget 2019)。4. 最近発見されたヒアルロン酸分解酵素TMEM2(transmembrane 2)をsiRNAでノックダウンしたところ、KIAA1199の発現上昇と細胞遊走能の亢進がみられた(Kudo et al., Pancreatology, in submission)。
以上の結果より、KIAA1199の発現は炎症またはTMEM2など他のヒアルロン酸分解酵素の発現などによって調節されており、膵癌の悪性度を高めている可能性がある。
|