近年、抗癌剤抵抗性の主因として、「がん幹細胞」の存在が示唆されている。しかし、現在まで明らかな効果のある「抗がん幹細胞」治療は存在しない。これまで私たちは、胆道癌における新規がん幹細胞関連遺伝子のスクリーニングを行ってきた。その結果、CD274 低発現細胞は静止期に局在し、CD274(PD-L1) ががん幹細胞に対して抑制的に働くことを見いだした。(Tamai,et al. Cancer Science, 2014) 更に、胆道癌症例の解析では、(これまで報告のある膵癌や肺 癌での結果とは逆に)CD274低発現症例は予後不良であることも明らかにした。従って、CD274 は胆道癌においては有効な治療ターゲットとはならな いことが考えられた。そこで、私たちはCD274 低発現分画で高発現している機能性分子を探索することで、新たな治療ターゲットを見いだそうとした。マ イクロアレイを用いたスクリーニングの結果、X遺伝子の発現がD274低分画で高発現しており、ノックダウンすると造腫瘍能が著しく低下した。X遺伝子 が発現すると、がん細胞は静止期に移行し、抗癌剤耐性を獲得する。このことから申請者は、X遺伝子 およびその下流シグナルを阻害すれば、胆管癌の治療抵抗性を減弱させられると考えた。本申請課題では、そのための詳細な分子機構の解明および阻害化合物の探索を行う。 これまでに確立したスクリーニング系を用いて化合物ライブラリのスクリーニングを行った。その結果、1種のヒット化合物を得た。この化合物を細胞株に加えると、がん幹細胞性が失われた。これらのことから、がん幹細胞を標的とできる化合物を同定したと考えた。
|