研究課題
がん細胞表面抗原に対する1本鎖抗体の可変領域をリンカーで結合した抗体部分にCD8α膜貫通ドメインとシグナル伝達領域(CD28/4-1BB/CD3ζ鎖)を融合した第三世代キメラ抗原受容体遺伝子を作製してレトロウイルスベクターに組み換えた。これとgag-pol、env 遺伝子発現ベクタープラスミドと共にレトロウイルス産生細胞に遺伝子導入して、一過性の組み換えウイルスを作製した。これをGibbon ape leukemia virus (GaLV)ベースのレトロウイルスパッケージング細胞に感染させ、ウイルス安定産生株を樹立した。これの培養上清(組み換えレトロウイルス)をT 細胞に添加してレトロネクチン法により遺伝子導入した。細胞傷害性試験の結果、CAR導入T細胞は、細胞表面のがん抗原を認識して、抗原特異的にがん細胞株を傷害することが明らかになった。一方、ヒトiNKT細胞に由来するiPSCから造血系分化を経由して、Flt3L, IL-7存在下, OP9-delta1上でT細胞への分化を誘導した。最終分化段階にIL-2とIL-15を添加した。分化したT細胞(iPSC-iNKT細胞)は、PHA刺激で増殖させることが可能であり、もとのiNKT細胞と同じT細胞受容体α鎖(Vα24)とβ鎖(Vβ11)を発現することをフローサイトメトリーで確認した。iPSC-iNKT細胞は、α-galactosylceramide(α-GalCer)を負荷した抗原提示細胞に対して、interferon-γを産生するとともに増殖応答を示し、抗原特異的にT細胞応答を示すことが明らかになった。以上より、我々が分化誘導したiPSC-iNKT細胞に、CARを導入することで、抗原特異的にターゲット細胞を傷害する可能性が示唆された。
3: やや遅れている
iPSCからiNKT細胞を分化させる為に使用する血清の選択に時間を要した。
iPSC-iNKT細胞の機能解析を進めるとともに、iPSC-iNKT細胞にCARを導入して、in vitroでがん特異的細胞傷害活性を明らかにする。iPSC-iNKT細胞に対するCAR導入が困難な場合が想定されるので、iPSCの段階でCARを導入した後にiNKT細胞に分化誘導する方法も試みる。
2017年度予定の研究に若干の遅れがあった。これに伴い未使用研究費が発生した。これらの未使用研究費は遅れた分の実験を次年度に行う際の消耗品に充てる予定である。
すべて 2017
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Cancer Lett.
巻: 411 ページ: 182-190
doi: 10.1016/j.canlet.2017.09.022