研究課題
ヒト末梢血単核球(peripheral mononuclear cell: PBMC)にα-galactosylceramide(α-GalCer)を負荷してヒト人工多能性幹細胞(iPSC)由来iNKT細胞(iPSC-iNKT細胞)を刺激した。刺激3日後、レトロウイルスベクターを用いてがん特異的キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor: CAR)遺伝子を導入(レトロネクチン法)した。しかし、遺伝子導入時のiPSC-iNKT細胞の増殖が弱く、導入効率が極めて低いことが明らかになった。CARを発現するiPSC-iNKT細胞分画をセルソーターで分離して、さらにPHA刺激後の細胞を用いて、がん細胞に対する細胞傷害活性を評価した。その結果、iPSC-iNKT-CARは、がん抗原の有無に関わらず、複数のがん細胞を傷害することが明らかになった。詳細な解析の結果、iPSC-iNKT細胞は、NKG2D及びDNAM-1依存性のNK活性により、がんを傷害することが明らかになった。以上より、我々が分化誘導している細胞は、T細胞というよりもNK細胞に近い表現系を示していることが示唆された。がん抗原特異的エフェクター機能を得るためにNK活性の低いエフェクター細胞に分化誘導する方法を試みた。OP9-delta1上でT細胞分化誘導する際に添加するサイトカインを変更した検討においても、充分なT細胞機能を発揮する細胞への分化が得られなかった。人工胸腺オルガノイド(Artificial Thymic Organoid: ATO)を用いたT細胞分化誘導法で作製したiPSC-iNKT細胞を京都大学iPS細胞研究所から提供して頂き機能解析を行った。この細胞は、α-GalCer負荷PBMC刺激への反応性が高まり、抗原特異的T細胞応答が著しく改善されていたものの高度のNK活性が残っていた。
4: 遅れている
iPS細胞から分化誘導したiNKTは、NK活性が強くキメラ抗原受容体の抗原特異的細胞傷害活性を評価することが困難であることが明らかになった。
現時点で、人工胸腺オルガノイド(Artificial Thymic Organoid: ATO)を用いたT細胞分化誘導法によって作製された細胞は、最もT細胞に近いと考えられている。この方法に改善を加えて抗原特異的エフェクター機能を発揮する細胞の構築を行う。その一方でiPSC-iNKT細胞に代わる他の細胞をベースとしたエフェクター細胞の構築も行い、CARの性能評価などを行う。
充分なiPSC-iNKT細胞分化が誘導できず分化後の解析を進められなかった。残予算は次年度の解析に充てられる。
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