研究課題
最終年度:ブタ心臓手術における熱可塑性人工弁輪の有効性評価が目的であった。前年度までに完成したデザインを元に作成した人工弁輪を、ブタに植え込み、6ヶ月後犠牲死させ人工弁輪の形体変化、構造変化を確認する予定であった。実際2か月齢の雄ブタに全身麻酔をかけ、人工心肺補助、心停止下に熱可塑性人工弁輪の縫着を行った。しかし、手術直後に心室性不整脈により死亡したため、6か月後の精査は不可能であった。研究期間全体:熱可塑性人工弁輪に使用したポリカプロラクトンの降伏点は14.68MPaであり、シュミレーションにおいて生体の弁輪の変形後の最高応力が11.7MPaであったことから、心収縮サイクルにおける人工弁輪としての硬度は十分である考えられた。人工弁輪加熱において、弁輪被覆材は温度測定、サーモグラフィーにて40度以下であり、連続10回の熱変形時においてもブタ心臓組織への熱損傷所見を認めず、安全に使用可能と考えられた。人工弁輪の変形にて実際にブタ僧帽弁の接合様式を調整できることが示された。弁尖接合距離の延長により僧帽弁形成術後の長期安定性を高められることが示唆された。本研究によって、僧帽弁形成術後に修正が必要な場合に人工弁輪を変形させることで僧帽弁への追加手技や人工弁輪の変更を行わずに弁尖の接合を改善させられる。これまで自在な変形を何度も行える人工弁輪の報告はなく、本研究が僧帽弁形成術の治療の選択肢を広げる有用な情報となりうると考えられた。また自在に変形できるため、各々の症例の術前評価によって弁輪形態を変化させられる、オーダーメード化した人工弁輪を作成することも目指すことができる。本人工弁輪の実用化に向けて、長期耐久性や三次元構造を考慮した変形と弁接合への影響などの評価が今後必要である。
すべて 2019
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Journal of Artificial Organs
巻: 22(2) ページ: 126-133
10.1007/s10047-018-1084-8