研究課題/領域番号 |
17K10721
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
熊谷 紀一郎 東北大学, 医学系研究科, 講師 (80396564)
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研究分担者 |
齋木 佳克 東北大学, 医学系研究科, 教授 (50372298)
川本 俊輔 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (20400244)
河津 聡 東北大学, 大学病院, 助教 (80633685)
鈴木 佑輔 東北大学, 大学病院, 特任助手 (70791698)
阿部 高明 東北大学, 医工学研究科, 教授 (80292209)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 虚血再潅流障害 / インドール化合物 / 心筋保護 / 肥大心筋 |
研究実績の概要 |
心臓血管外科手術成績が大きく向上した今日においても、人工心肺下、心停止後の虚血再環流障害は、避けることのできない大きな予後規定因子である。特に虚血再潅流障害に対して脆弱である肥大心筋症例はしばしば致命的である。高齢化に伴い肥大心筋症例はますます増加し、今後問題はより深刻化するであろう。近年、本学において細胞内ATP増加、虚血に対する細胞保護作用などを有するインドール化合物が発見され、動物実験において腎、脳における虚血祭潅流障害の抑制効果が証明された。そこで本研究の目的は、心臓血管外科手術における肥大心筋虚血再潅流障害にたいする新規インドール化合物の病態改善効果を検証することである。本化合物は心臓における作用は十分に明らかになっていないため、まず小動物モデルでの実験系を組む事から始めた。順序としては、すでに確立されている肥大心筋ラットモデルを作成し、インドール化合物を投与した上で、この肥大心を摘出、同種心移植を行うことにより虚血再潅流障害の心機能に与える影響や生化学的、病理組織学的、分子生物学的な機序を調査する方針を立てた。これに先立ちインドール化合物の投与法を確立するために、ラットにインドール化合物を経口投与し、心筋内のATP濃度測定を行った。結果、投与直後の心筋内ATP濃度はコントロールと比較し上昇していたが、投与後1時間ではすでにコントロールと同じであり、投与方法および投与量などを再検討する必要が生じ、現在検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究が遅れている理由は、インドール化合物の投与による心筋内ATP濃度上昇が、持続しないことが判明したためである。現在、インドール化合物は経口投与する方法が唯一の投与法である。インドール化合物の効果を評価する上で、投与後の心筋内のATP濃度を測定することとした。結果、経口内服投与直後の心筋内ATP濃度はコントロールと比較し上昇していたが、投与後1時間ではすでにコントロールと同じであった。虚血再潅流モデルを作成するには一定以上の虚血時間を要するため、投与方法および投与量などを再検討する必要が生じ、現在検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
ラットに対するインドール化合物の投与法の再検討が必要である。まず、現在経口投与を行なっているインドール化合物の投与量の増量を行ない、心筋内ATP濃度の上昇が投与後1時間以上経過しても維持されているかどうか明らかにする。増量にもかかわらず、心筋内のATP濃度上昇が明らかでない場合は、インドール化合物の投与経路を変更する。現在は経口投与のみ可能であるが、化合物を水溶するなどして皮下投与あるいは静注投与など可能であるかどうか検討することとする。 実験系としては、同様にラットを用いて肥大心筋モデルを作成し、インドール化合物を投与したのち、同種心移植により虚血再潅流モデルを作成する。インドール化合物投与後の肥大心を摘出ののち、臓器保護液にて保存、その後レシピエントラットの腹部に肥大心を移植する。研究計画では、新規インドール化合物のドナーラットへの投与時期は臓器摘出24時間前と2時間前の計2回、50mg/kgとしているが、インドール化合物投与量あるいは投与法を上記先行実験の結果にて変更することとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に予定していた、インドール化合物心筋内ATP濃度測定実験を平成30年度に行うこととしたため、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、平成30年度の助成金と合わせてインドール化合物心筋内ATP濃度測定実験に使用する計画である。
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