研究課題/領域番号 |
17K10722
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
徳永 千穂 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (30451701)
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研究分担者 |
酒井 俊 筑波大学, 医学医療系, 講師 (30282362)
坂本 裕昭 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (30611115)
兵藤 一行 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (60201729)
宮内 卓 筑波大学, 医学医療系, 教授 (60222329)
松下 昌之助 筑波技術大学, その他部局等, 名誉教授 (70359579)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 肺高血圧性肺高血圧症 / 放射光微小血管撮影 / 血管内皮細胞障害 / シアストレス |
研究実績の概要 |
肺動脈性肺高血圧症は、原発性ないし種々の疾患に伴って肺動脈圧が上昇する肺血管疾患であり、無治療では予後不良の病態である。肺動脈性肺高血圧症の原因は、特発性肺動脈性肺高血圧や膠原病、先天性心疾患に伴う高肺血流によるものなど多様であるが、いずれの肺高血圧症でも肺細動脈の中膜肥厚や内膜増殖を認める。これらの変化は、炎症や増加したshear stressによって血管内皮細胞が障害され、エンドセリン(Endothelin: ET)や血管内皮増殖因子(Vascular endothelial growth factor :VEGF) などの物質が肺動脈閉塞の進行へ関与している可能性が示唆されている。 本研究は高エネルギー加速器研究機構放射光研究施設における放射光由来X線源と高感度HARP受像管、ハイビジョンシステム(NHK放送技術研究所提供)を用いた高感度放射光微小血管撮影法を用いて、肺動脈における微小血管血流変化と血管内皮細胞障害の機序を解明すること目的としている。 この高感度放射光微小血管撮影法の最も大きな特徴は、ラットなどの小動物におけるin-vivoの血管リモデリングを、リアルタイムで可視化可能とする点である。2020年度は、コロナウイルス感染拡大のため、KEKでの血管造影を施行することが困難であった。新規の肺動脈微小血管造影の画像を得ることができなかったが、過去の画像をもとに、微小肺動脈径の測定を行い、その病理組織学的所見と比較し、肺動脈微小血管造影の病期診断モダリティとしての整合性について検証をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
高エネルギー加速器研究機構でのシンクロトロン電圧が2019年度から従来の6.5GeVから5.0GeVに変更になったことにより、微小肺細動脈リモデリングの解析のための放射光微小血管撮影の画像解析度低下を生じ、放射光微小血管撮影システム自体の再構築が必要となった。2020年度はこれらの技法修正を行う予定であったが、コロナウイルス感染蔓防のため、マシンタイムの減少にくわえて、県をまたいだ移動の制限自粛により、画像データ収集にも遅れを生じ、実験計画延長が必要となった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、炎症性肺高血圧症であるモノクロタリン誘導肺高血圧ラットおよび腹部大動脈-下大静脈シャントによる高流量性肺高血圧症モデルラットなどの、異なる肺高血圧ラットモデルを使用して、in-vivoの血管リモデリングを、リアルタイムで可視化することを試みる。さらには、放射光微小血管撮影法より得られた動画から、肺動脈流速を測定し、微小肺動脈にかかるシアストレスを定量化することにより、高感度放射光微小血管撮影法を、異なる病態生理を起源とする肺高血圧症の非侵襲的病期診断モダリティとして確立することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に予定していた、高エネルギー加速器研究機構放射光研究施設における放射光由来X線源と高感度HARP受像管、ハイビジョンシステム(NHK放送技術研究所提供)を用いた高感度放射光微小血管撮影法が、コロナウイルス感染拡大のため施行困難となり、予測した動物実験経費を次年度に繰り越すことになった。
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