研究課題/領域番号 |
17K10723
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
松浦 馨 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (50436375)
|
研究分担者 |
松宮 護郎 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (20314312)
上田 秀樹 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (50738987)
黄野 皓木 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (40375803)
渡邉 倫子 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (20766274)
劉 浩 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (40303698)
田村 友作 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (60738988) [辞退]
焼田 康紀 千葉大学, 医学部附属病院, 医員 (40790671)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 数値流体力学 / 冠動脈外科 / 心臓血管外科 |
研究実績の概要 |
本研究はまずは最適化モデル、つぎに実際の術前術後の画像を用いてCFDモデルを作成し、血流動態力学的な考察と、心臓血管外科の臨床的考察を加えることで、最適な冠動脈バイパスモデルを解明することを目的としている。最適化モデルでは完全閉塞モデルの他に狭窄モデルや多枝バイパスモデルについても多くの結果が得られ、国内外の学会で発表し、新たに今年度1編(計2編)の英語雑誌への原著論文投稿も果たすことができた。これまで閉塞モデルでは吻合長が長いほどenergy efficiencyが高いという結果であったが、狭窄モデルでは8mmをピークにenergy efficiencyが低下するという結果が得られた。多枝吻合モデルでは後の吻合に狭窄度の高い吻合を選んだ方がエネルギー効率が高いことを発表した。こちらについても英語論文を投稿中である。 また実際のCABG術後患者の画像を用いたCFDモデルの作成については、まず典型的なCABGの吻合モデルであるITA-LAD吻合のCFDモデルを作成し、流出血管が大きい、吻合径やグラフトが大きい方がよりエネルギー効率が良い結果であった。さらに吻合角度やnativeとgraftの径の比率など詳細な検討を加えているところである。 さらに、これまで静脈グラフトの長期開存が悪い理由は生理学的に内膜変性が進んで石灰化するためと思われていたが、静脈グラフト特有の壁の不整による血流学的不利な要素が長期開存に開存する可能性が指摘され、欧米ではexternal stentを用いて静脈の壁の不整を滑らかにする試みがなされている。今後実際の静脈グラフトのCFDモデルとexternal stentを装着した静脈グラフトのCFDモデルを作成して比較検討することで、静脈グラフトの長期開存における血流動態の及ぼす影響について検討し、発表していく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理想モデルではNative完全閉塞モデルについての研究を心臓血管外科分野では最も権威の高い、欧州胸部外科学会で口演として発表し、学会期間中のpick up topicとして学会が毎日発行するNews letterにもとりあげられた。同研究は同学会機関誌の英語雑誌Interactive Thoracic and Cardiovascular Surgeryに投稿しacceptされ、publishに至っている。国内でも精力的に発表し、第30回冠疾患学会では最優秀演題賞を受賞することができた。また第34回医工学治療学会ではシンポジウムでの講演を依頼される栄誉にあずかり、多くの反響を得ることができた。また狭窄モデルについても学会発表とともに2019年Jounal of Thoracic Diseaseに原著論文がacceptされ、publishに至っている。これまで閉塞モデルでは吻合長が長いほどenergy efficiencyが高いという結果であったが、狭窄モデルでは8mmをピークにenergy efficiencyが低下するという結果が得られた。多枝吻合モデルでは後の吻合に狭窄度の高い吻合を選んだ方がエネルギー効率が高いことを発表した。こちらについても英語論文を投稿中である。 また実際のCABG術後患者の画像を用いたCFDモデルの作成も着実に進行している。まず典型的なCABGの吻合モデルであるITA-LAD吻合のCFDモデルを作成し、流出血管が大きい、吻合径やグラフトが大きい方がよりエネルギー効率が良い結果であった。さらに吻合角度やnativeとgraftの径の比率など詳細な検討を加えているところである。今年度は多くの患者の実際の画像データが得られたのでそれらを解析し患者個別CFDモデルから詳細な検討を加えていく予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
理想モデルについては完全閉塞モデル、狭窄モデル、多枝バイパスモデル以外にも口径差のあるnative とgraftとの吻合モデル、狭窄を考慮した多枝バイパスモデルなど複雑なモデルについても研究していく予定である。また、実際のCABG患者の術後MDCTを使用してCFDモデルを作成する患者個別モデルでもwall shear stressやoscillatory indexなどを計測し、理想的な吻合口の径、平行方向、垂直方向への角度などを追及していく予定であり、またその先には術前患者におけるバイパスシミュレーションモデルを作成していく予定である。 また、新しい研究として、これまで静脈グラフトの長期開存が悪い理由は生理学的に内膜変性が進んで石灰化するためと思われていたが、静脈グラフト特有の壁の不整による血流学的不利な要素が長期開存に開存する可能性が指摘され、欧米ではexternal stentを用いて静脈の壁の不整を滑らかにする試みがなされている。今後実際の静脈グラフトのCFDモデルとexternal stentを装着した静脈グラフトのCFDモデルを作成して比較検討することで、静脈グラフトの長期開存における血流動態の及ぼす影響について発表する予定である。 我々の研究発表から同様の研究をするグループも増えてきており、さらに議論を進めていける環境が整いつつあると感じている。今後は同様の研究を行っているグループとも共同研究も検討しながら、さらに研究の幅を広げていく予定である。 様々な冠動脈バイパスモデルでの血流動態を解析することで、実際の臨床にパラダイムシフトを起こすような研究ができると考えており、最終的には術前患者におけるバイパスシミュレーションモデルを作成していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定した解析ソフトウェアの購入方法を年間ライセンスではなく、永続ライセンス(前年度購入)とした。今年度研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため、当初の見込み額と執行額が異なったが研究計画に変更はなく、次年度使用額も含め当初の予定通りの計画を進めていく。 前年度購入のソフトウェアとは別の解析ソフトウェアの購入する予定であるため、次年度使用額と次年度交付予定額を合わせて使用予定である。次年度が研究最終年度のため研究成果発表(学会発表・論文発表)にも使用する予定である。
|